マーカス・ガン現象 Marcus Gunn phenomenon (下顎眼瞼連合運動現象 jaw-winking phenomenon) は片側の先天性眼瞼下垂と下顎の運動に伴う「下垂したまぶた」の後退が見られる先天異常です。通常は片側性、散発性ですが、両側性、家族性発症の報告もあります。先天性の三叉神経-動眼神経間の共同運動 trigemino-oculomotor synkinesis のため、口を大きく開けたり、口を左右に動かすと、まぶたが開きます (新生児期、乳児期に顕著といわれており、授乳中この症状に気づかれることがあります)。病名として、「現象 phenomenon」ではなく、「症候群 syndrome」を用いることもあります。「頤瞬現象」という日本語名もあります。
マーカス・ガン現象. 71症例のレビュー
Ophthalmology. 1984 Jan;91(1):27-30.
The Marcus Gunn phenomenon. A review of 71 cases.
Pratt SG, Beyer CK, Johnson CC.
[要約の邦訳]
マルクス・ガン現象を伴う 71症例の臨床所見、自然経過、病理学的所見、治療についてレビューした。本症候群を有する症例では、弱視 amblyopia (59%), 両上転筋麻痺 double elevator palsy (25%), 不同視 anisometropia (25%), 上直筋麻痺 superior rectus muscle palsy (23%) の頻度が有意(訳者注: に多い)ことがわかった。長期追跡調査では、年齢とともに良くなった症例はなかった。手術を要した大多数の患者において、患側の上眼瞼挙筋切除術 levator excision および両側の前頭筋利用吊り上げ術 frontalis suspension の (訳者注: 併用)手術を推奨する。
中等度から高度の Marcus-Gunn 下顎眼瞼連合運動性下垂の治療
Ophthalmology. 1999 Jun;106(6):1191-6.
Management of moderate-to-severe Marcus-Gunn jaw-winking ptosis.
Khwarg SI, Tarbet KJ, Dortzbach RK, Lucarelli MJ.
Department of Ophthalmology and Visual Sciences, University of Wisconsin-Madison Medical School, 53792, USA.
[要約の邦訳]
目的: 中等度から高度の Marcus-Gunn 下顎眼瞼連合運動性眼瞼下垂に対する上眼瞼挙筋切除術および前頭筋利用吊り上げ術の手術成績を報告する。
デザイン: 後向き・非比較の症例調査.
参加者: 中等度から高度の Marcus-Gunn 下顎眼瞼連合運動性眼瞼下垂を伴った 24症例 (片側性 21例, 両側性 3例) は、1978年から1997年の期間中、一人の術者により外科的治療を受けた。
介入方法: 患側または両側の上まぶたの眼瞼挙筋切除術 levator excision の後、両側の前頭筋利用吊り上げ術 frontalis suspension が行われた。
主要な結果の判定法: 下顎眼瞼連合運動 jaw-winking の術後改善度を決定した。眼瞼下垂手術の結果は普段の上眼瞼の高さと左右対称性に基づいて、good, fair, poor と評価した。
結果: 術後の追跡調査期間は 6か月から 153か月, 平均 36.9か月であった。下顎眼瞼連合運動の見られた 27眼瞼、全例に上眼瞼挙筋切除術を施行した後、 10眼瞼 (37.0%)では jaw-winking が完全に解消し、13眼瞼 (48.2%)は側方への下顎運動時のときだけ軽度 (1 mm以下) の瞬目が見られた (機能的および整容的に問題なかった)。4眼瞼 (14.8%)については、結果が記録されていなかった。両側の前頭筋利用吊り上げ術と患側の上眼瞼挙筋切除術の両手術を受けた 5症例のグループでは、最終結果は good 2例 (40%), poor 3例 (60%)であった。両側の上眼瞼挙筋切除術を受けた 19症例では、最終結果は good 13例 (68.4%), fair 6例 (31.6%)であった。
結論: 中等度から高度の下顎眼瞼連合運動性眼瞼下垂に対して、両側上眼瞼挙筋切除術の後、両側の前頭筋利用吊り上げ術を行う手術は、jaw-winkingと眼瞼下垂の両方に対して満足できる矯正が得られた。
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