[文献 1] 眼窩腫瘍と類似病変を有する 1264症例の調査: 2002年Montgomeryレクチャー, パート1.
Ophthalmology. 2004 May;111(5):997-1008.
Survey of 1264 patients with orbital tumors and simulating lesions: The 2002 Montgomery Lecture, part 1.
Shields JA, Shields CL, Scartozzi R.
Oncology Service, Wills Eye Hospital, Thomas Jefferson University, Philadelphia, Pennsylvania 19107, USA.
目的: 眼部腫瘍センターにて紹介受診となった症例に基づいて眼窩腫瘍の発生頻度を決定する
研究デザイン: 後向き調査法にて診察を行った症例の調査を行う。
参加者: 眼窩内占拠性病変のため、眼部腫瘍センター( ocular oncology center) にて受診した合計 1264症例。
方法: 過去30年余りの期間に眼窩腫瘤が疑われ紹介受診した1264症例について、後向きチャート(訳者注: 診療録などの)レビューを行った。病変は一般カテゴリーに分類し、個々の症例の診断は、臨床所見, CT, MRI, 病理組織学的検査に基づいて行われた(検査項目は検査可能であったもの)。年齢層別に良性および悪性腫瘍の例数および頻度 (%)も調査した。
主要な結果: 眼窩腫瘍、偽腫瘍の頻度
結果: 1264症例中、病変数と頻度について、
一般カテゴリー分類:
嚢胞性 cystic 70 cases (6%)
血管原性 vasculogenic 213 cases (17%)
末梢神経病変 peripheral nerve lesions 23 (2%)
視神経および髄膜性腫瘍 optic nerve & meningeal tumors 105 (8%)
線維細胞性病変 fibrocytic lesions 13 (1%)
骨性および線維骨性腫瘍 osseous & fibro-osseous tumors 21 (2%)
軟骨性病変 cartilaginous lesions 1 (<1%)
脂肪細胞性および混合腫様病変 lipocytic & myxoid lesions 64 (5%)
筋原性腫瘍 myogenic tumors 36 (3%)
涙腺病変 lacrimal gland lesions 114 (9%)
原発性色素細胞性病変 primary melanocytic lesions 11 (<1%)
転移性腫瘍 metastatic tumors 91 (7%)
リンパ腫および白血病性病変 lymphoma & leukemia lesions 130 (10%)
続発性眼窩腫瘍 secondary orbital tumors 142 (11%)
組織球性病変 histiocytic lesions 17 (1%)
甲状腺関連眼窩疾患 thyroid-related orbitopathy 67 cases (5%)
他の炎症性病変 other inflammatory lesions 133 (11%)
その他 miscellaneous other lesions 13 (1%).
主要な診断名:
リンパ系腫瘍 lymphoid tumor (139 cases;11%)
特発性眼窩内炎症 idiopathic orbital inflammation (135 cases; 11%)
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (77 cases; 6%)
リンパ管腫 lymphangioma (54 cases; 4%)
髄膜腫 meningioma (53 cases; 4%)
視神経膠腫 optic nerve glioma (48 cases; 4%)
転移性乳癌 metastatic breast cancer (44 cases;4%)
脈絡膜悪性黒色腫の眼窩内進展 orbital extension of uveal melanoma (41 cases; 3%)
毛細血管腫 capillary hemangioma (36 cases;3%)
横紋筋肉腫 rhabdomyosarcoma (35 cases; 3%)
皮様脂肪腫 (成熟脂肪組織を有する類皮腫) dermolipoma (31 cases; 3%)
眼窩脂肪ヘルニア herniated orbital fat (30 cases; 2%)
皮様嚢胞 dermoid cyst (26 cases; 2%)
静脈瘤 varix (26 cases; 2%),
涙腺排出管嚢胞 dacryops (19 cases; 2%)
その他のまれな疾患
悪性、良性の頻度(1264 病変の内訳):
全年齢では、良性 810 (64%), 悪性 454 (36%)
年齢層別悪性頻度: 20% (小児 0-18 才), 27% (若年成人・中年 19-59 才), 58% (高齢者 60-92 才)
最も多い悪性腫瘍:
小児 (0-18才): 横紋筋肉腫 3% (全眼窩腫瘤中)
高齢者 (60才以上): リンパ腫 10%
結 論: いろいろな腫瘍、偽腫瘍が眼窩内に発生する。1264 病変中、良性 64%、悪性 36% であった。悪性腫瘍の頻度は年齢とともに増加し、高齢者 (60才以上)では、より高齢者のリンパ腫と転移性腫瘍の増加とともに、悪性腫瘍の頻度は良性を上回った。
[他の解説ページ:発生頻度の高い眼窩腫瘍について]
eMedicine - Tumors, Orbital
http://www.emedicine.com/oph/topic758.htm
Author: Michael Mercandetti, Surgery, Doctors Hospital of Sarasota
Top 3 pediatric tumors are dermoid cysts, capillary hemangiomas, and rhabdomyosarcoma.
小児でのトップ3: 皮様嚢胞, 毛細血管腫, 横紋筋肉腫
Top 3 adult tumors are lymphoid tumors, cavernous hemangiomas, and meningiomas.
成人でのトップ3: リンパ系腫瘍, 海綿状血管腫, 髄膜腫
[追加エントリー 2005/5/29: 文献 2]
21年間に日本人患者にみられた眼窩腫瘍 244腫瘍のレビュー: 原発部位と存在部位.
Jpn J Ophthalmol. 2005 Jan-Feb;49(1):49-55.
A review of 244 orbital tumors in Japanese patients during a 21-year period: origins and locations.
Ohtsuka K, Hashimoto M, Suzuki Y.
Department of Ophthalmology, Sapporo Medical University School of Medicine, Sapporo 060-8543, Japan.
目的: 患者年齢分布、病理、腫瘍原発部位や存在部位を確定するために眼窩腫瘍 244症例をレビューする。
方法: 1981年から2002年の期間、自施設における組織病理学的または放射線学的に確かめられた眼窩腫瘍例をレビューし、患者年齢、病理、腫瘍原発部位、眼窩内の腫瘍部位を調査した。連続したレビュー症例 244例は、年齢 0歳から 90歳、平均年齢 48.7歳、男性 114例、女性 130例であった。
結果: 244症例中、213症例 (89%) は原発性眼窩腫瘍、23症例 (9%) は隣接部位に発生した続発性腫瘍、 8症例 (2%) は転移性腫瘍であった。眼窩内の腫瘍部位に関しては、122腫瘍 (50%) は筋円錐外、36腫瘍 (15%) は筋円錐内であり、86腫瘍 (35%) は涙腺部位であった。主な腫瘍は、
筋円錐外では、
反応性リンパ系過形成 reactive lymphoid hyperplasia (22%)
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (20%);
筋円錐内では、
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (25%)
視神経の神経膠腫 optic nerve glioma (14%)
視神経鞘の髄膜腫 optic nerve sheath meningioma (14%);
涙腺部位では、
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (40%)
多形性腺腫 pleomorphic adenoma (24%)
であった。
244症例の年齢分布をみると、0歳から 9歳、60歳から69歳に2つのピークがあった。
0歳から 9歳までの患児では、
類皮嚢胞 dermoid cyst (26%)
視神経の神経膠腫 optic nerve glioma (11%)
毛細血管腫 capillary hemangioma (11%)
出血性リンパ管腫 hemorrhagic lymphangioma (11%)
が多かった。
一方、40歳以上の患者では、
悪性リンパ腫 malignant lymphoma (31%)
眼窩偽腫瘍 orbital pseudotumor (24%)
多形性腺腫 pleomorphic adenoma (10%)
海綿状血管腫 cavernous hemangioma (9%)
が多かった。
結論: 眼窩腫瘍の病理学的プロフィールは、患者年齢、眼窩内の腫瘍部位によって特徴があった。発症時年齢、腫瘍部位、放射線学的所見は、生検、腫瘍切除前の腫瘍診断や治療戦略を決定するために重要な情報を提供する。
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