10才以上18才未満の小児における弱視治療 (前向き・パイロット研究)
Am J Ophthalmol. 2004 Mar;137(3):581-3.
A prospective, pilot study of treatment of amblyopia in children 10 to <18 years old.
Pediatric Eye Disease Investigator Group.
目的: 年長児や思春期の子供を対象とした弱視治療が成功するか調べる。
方法: 視力 0.125 から 0.5 までの弱視となっている 10才以上18才未満の小児 66症例。治療方法は毎日2時間以上のアイパッチを継続し、アイパッチ中、少なくとも1時間は近くを見るようにする。治療開始前と治療2ヶ月後の視力を測定した。
結果: 66症例中18例 (27%) は、2段階以上の視力改善が得られた (95%信頼区間, 17%-40% )。改善度については、10才以上-14才未満の対象年齢と14才以上-18才未満の年齢では、ほぼ同じであった。
結論: 弱視治療は、年長児や思春期の子供であっても視力を改善させることができる。治療可能年齢の上限を調べるためにはランダム化比較臨床試験が必要である。
訳者注: 視力は、分数視力 (Snellenなど)を日本で一般的な国際標準小数視力表示に訳者が換算したものある。2段階とは、分数視力による変化のこと。
出典元の医学雑誌 AJO に採用されるためには、論文内容の質があるレベル以上でなければなりません。たとえば、過去に眼科受診した弱視症例の治療経過をまとめて発表すると、「後向き研究」とよばれ、対象症例数を多くすることはできますが、その結果・成績については、バイアス・研究者の作為など入る可能性が高くなり、結果(科学的なエビデンス)の質は極端に低下します。今回の論文は、治療前から計画的に参加する前向き研究で、しかもパイロット(先行的、予備的な)研究です。今後、より質の高いアイパッチによる弱視治療の結果・エビデンスを調査するときは、症例数を増やしたり、ランダム割付比較臨床試験となります(因みに、日本では、これまでの医学臨床研究は「後向き研究」が多いようです)。複数の医療機関が治験に参加し、無作為に治療を行う、行わない群に割り付けて数百症例を数ヶ月から数年治療し続ける臨床研究は、かなり労力のかかる研究です。また、アイパッチ治療についての最大の問題は、治験期間中に確実に自宅で行ったという科学的なチェックがないと、治験デザインだけを工夫しても、全く無意味となります。ICチップなどに実際のアイパッチ時間を記録させる装置も開発されているようですが、まず乳幼児を対象として研究が始められると思います。
投稿情報: ブログ主催者 | 2004年11 月 1日 (月) 14:32
さっそく回答を頂きありがとうございます。
こちらの情報では、10歳までに治療を施さないと手遅れだと聞いていたので、少しでも改善の可能性があると知り安心しました。ただ
子供の症状の度合いにもよると思うので、
主治医とよく相談して決めたいと思います。
66症例というのは、この年齢になると治療をする人が極端に少ないと言うことなのでしょうか。
投稿情報: まーりー | 2004年11 月 1日 (月) 13:40