ARN syndrome 両眼発症例について、最近の論文と発症頻度をお知らせいたします。
日本眼科学会雑誌 1997 Mar;101(3):243-7.
A study of 44 patients with Kirisawa type uveitis
Ichikawa T, Sakai J, Yamauchi Y, Minoda H, Usui M.
Department of Ophthalmology, Tokyo Medical College, Japan.
1983年 1月から1995年 2月までに東京医科大学病院ぶどう膜炎外来を受診した桐沢型ぶどう膜炎 (KU) の44例55眼を対象として、詳細な臨床的検討が行われている。両眼性の頻度については、本論文の [結果 2. 臨床像] の 3) 罹患眼を引用します。
3) 罹患眼については、VZV-KU の31例中 6例が両眼性であったのに対して、HSV-KU の 13例はすべて片眼性であった。両眼性 VZV-KU では 1眼が発症して 1 から 2か月後に他眼に発症した.
[追記: 2005/6/21] 上記医療機関における治療マニュアルの一部を引用いたします。
典拠:「臨床眼科 増刊号 vol.54 no.11 2000. 医学書院」
坂井潤一: 感染性ぶどう膜炎の治療. pp299-301.
========================== 表2 治療マニュアル(代表例) ========================== 桐沢・浦山型ぶどう膜炎 1) 病因ウイルスが HSV の場合 アシクロビル 30mg/kg/日 (2~3週間) プレドニドロン 60mg/日から漸減 小児用バファリン® 1錠/日 2) 病因ウイルスが VZV の場合 アシクロビル 30mg/kg/日 (2~3週間) インターフェロン-β 300万 IU/日 (2週間) プレドニドロン 60mg/日から漸減 小児用バファリン® 1錠/日 *硝子体手術を必要とすることが多い。
日本眼科学会雑誌. 1984 Jan;88(1):22-51.
Clinical aspect of uveitis
Urayama A, Sakuragi S, Sakai F, Koseki T, Tanaka Y, Yamaki K, Nakayama R, Hirano Y, Sakuraba H, Takahashi H, et al.
浦山 晃先生の特別講演論文「葡萄膜炎の臨床」にて、日本における桐沢型ブドウ膜炎症例のアンケート調査成績が発表されている。昭和58年 (1983)の学会報告に合わせて全国の大学、医療機関に対してアンケート調査が行われたが、記載不足等の理由で保留した症例を除く、国内症例 107症例 の臨床像(一部)は、
性別: 男 65症例, 女 42症例
年齢: 平均 40才 (10才から74才)
患側: 片眼 97症例, 両眼 10症例
であった。
【他論文】
文献番号 #006 に記載されている薬剤の用法用量については、原文要旨(英文)も併記しました。ドイツ語圏の処方箋の略語は、
医学用語辞書 処方略語 (ABC順 一部抜粋)
をご覧下さい。なお、論文タイトルは網膜動脈壊死となっていますが、当方の転記ミスではありません。
#006) Klin Monatsbl Augenheilkd. 1994 Apr;204(4):235-40.
Bilateral acute retinal artery necrosis--healing of the second affected eye
Kalman A, Vogt M, Bernasconi E, Gloor B.
Augenklinik, Universitatsspitales Zurich.
背景: acute retinal necrosis syndrome (ARN) は水痘帯状疱疹ウイルスまたは単純疱疹ウイルスによっておこる。しかしながら、罹患眼の治療や他眼の発症予防のための抗ウイルス薬の投与量と投与期間はいまだ明確でない。ステロイド治療のタイミングを検討し、また、他眼のARN 症候群の治療が奏効した症例を提示する。
症例: はじめの罹患眼: 免疫能低下のない(HIV 陰性) 27才の症例は、発熱後2ヶ月して右眼に急性虹彩炎を来たした。14日後、ARN 症候群がみられた。患者は、
アシクロビル 1回量 750mg 一日 3回静脈内投与 6日間
Acyclovir 3 x 750 mg i.v. for 6 days
その後、1回量 200mg 一日 5回経口投与 5日間
5 x 200 mg orally for 5 days
の治療を受けた。患者は治療にもかかわらず、手術不能の網膜剥離に至った。
他眼: 8日後、左眼に限局した網膜壊死が現れた。水痘帯状疱疹 DNA (PCR法) が前房水から検出された。アシクロビル治療は、
1回量 1.1g 12時間毎から 1.0g 8時間毎に増量した。
from 1.1 g q 12 h (2 x 15 mg/kg/d) to 1.0 g q 8 h (3 x 12.5 mg/kg/d).
4週後に静脈内治療から内服治療 1回量 800 mg 一日 5回 12週間に変更した。
oral therapy of 5 x 800 mg for 12 weeks
その後、1回量 400 mg 一日 5回に減量し、12週間続けた。
reduced to 5 x 400 mg for another 12 weeks
コルチコステロイド薬の内服治療は、第11病日から始め、初回投与量プレドニゾロン 100mg/日として、ゆっくり投与量を漸減し、18週間投与した。
100 mg Prednisone, in slowly reducing dosage during 18 weeks
6ヶ月後には、視力1.0で完全に回復した。
結論: 他眼の病気は急性虹彩炎と続発性緑内障から始まった。この症状は水痘帯状疱疹ウイルスまたは単純疱疹ウイルスによっておこる acute retinal necrosis syndrome の特徴的な前駆症状ですが、網膜所見は最初にはみられませんでした。上述のような長期間の治療が必要であったか、否かは1ケースの症例報告のため明確ではありませんが、著者らは、追加データが明らかになるまで、大量投与法を推奨します。
[追記 2005/7/14]バラシクロビル と アシクロビル
valacyclovir is a prodrug of acyclovir
塩酸バラシクロビル (商品名 バルトレックス ®)は、従来の抗ウイルス薬 「アシクロビル (商品名 ゾビラックス ®)」のプロドラッグで、経口吸収性がよくなっています。バルトレックス服用後、消化管より吸収され、活性代謝物 アシクロビルになります。単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス治療薬です。
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