流行性角結膜炎や咽頭結膜熱 (通称 プール熱)などの原因ウイルスであるアデノウイルスが眼表面に長期 (10年)存続することを証明した最新の論文です。
[訳者注] 医学用語 papillary conjunctivitis は「乳頭状結膜炎」 「乳頭性結膜炎」とよばれることもありますが、「乳頭結膜炎」と訳しました。
結膜炎10年後の涙液層におけるアデノウイルス存続のエビデンス
J Med Virol. 2005 Oct;77(2):227-31.
Evidence for persistence of adenovirus in the tear film a decade following conjunctivitis.
Kaye SB, Lloyd M, Williams H, Yuen C, Scott JA, O'Donnell N, Batterbury M, Hiscott P, Hart CA.
St. Paul's Eye Unit, 8Z Link, Royal Liverpool University Hospital, Prescot Street, Liverpool, United Kingdom.
[要約の邦訳]
アデノウイルス結膜炎に続発し慢性乳頭結膜炎を来たすことが記載されています。しかしながら、アデノウイルスが涙液層 tear filmと結膜にどのぐらいの期間存続できるか知られていません。アデノウイルス結膜炎発症後にウイルスが眼表面に存続しているか確定するために、アデノウイルスが10年前に検出されたアデノウイルス結膜炎既往患者 304症例に持続症状または再発症状に関する質問表を送り、本調査に参加するよう募集した。患者の診察を行い、涙液層洗浄液, ろ紙, 採取用綿棒を使用し、両眼から涙と結膜細胞を収集し、ウイルス分離を行った。眼部の検体からの抽出DNAは単純疱疹ウイルス (thymidine kinase) とアデノウイルス (hexon) 遺伝子に対するプライマーを使用し増幅した。アデノウイルス単位複製配列 amplicon が解析され、オリジナルの血清型と比較した。30 症例が参加し、このうち 19例は持続性乳頭結膜炎 persistent papillary conjunctivitis を呈していた。アデノウイルス DNAのエビデンスは、30例中 17例で検出され、このうち 15例は慢性乳頭結膜炎を呈していた。アデノウイルス DNA は乳頭結膜炎と有意に関連していた (P = 0.03)。アデノウイルス単位複製配列 amplicon は 6症例で解析に成功した。4症例では アデノウイルス 3型が寄生 harbor しており、10年前に最初に感染したものと同じ血清型であった。2症例は、元々アデノウイルス 3型であったが、現在の血清型は 4型であった。眼表面にアデノウイルスが感染すると、持続性または再発性結膜炎に進展しやすくなる可能性があり、その所見はアデノウイルス DNAの長期間存続の証拠との関連性があるように思われます。(©) 2005 Wiley-Liss, Inc.
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