「局所麻酔薬による真性アレルギー反応はごくまれなものである」ことを結論の1つとしている論文ですが、麻酔薬注射前に行う検査 (皮内テストなど) では陰性(テスト部位の皮膚が発赤しない)であっても、低頻度ながら手術中・後に麻酔薬により全身・局所反応(即時型反応ないし遅延型アレルギー)が実際に生ずることも証明した論文です。
J Allergy Clin Immunol. 1996 Apr;97(4):933-7.
Adverse reactions to local anesthetics: analysis of 197 cases.
Gall H, Kaufmann R, Kalveram CM.
Department of Dermatology, University of Ulm, Germany.
背景:局所麻酔薬による副作用はしばしば報告されていますが、発症メカニズムについてはほとんど知られていません。著者らはこれらの薬品使用後に発生した197件の事象を経験した177症例を調査した。
方法:診断的アプローチとして、原因となった麻酔薬、および原因とは関係のない麻酔薬を用いてプリックテスト、皮内テスト、チャレンジ(誘発)テストを行った。一部のケースでは、特異IgE(RIA法)を測定した。さらに、メタ重亜硫酸ナトリウム、PHBAなどの含有防腐剤についても検査した。
結果:局所麻酔薬に対するプリックテストと皮内テストは、全例で陰性であった。3症例のみ原因薬品 (アミド基を有する麻酔薬) を用いた皮下テストにて陽性反応を来たした。1症例は、メピバカイン mepivacaine に対する遅延型反応であったが、他の2症例は、アーティカイン articaine とリドカイン lidocaine に対して即時型反応を呈した。しかしながら、即時型反応2症例の血液検査において、特異的IgEは検出されなかった。防腐剤に対して皮膚反応陽性を呈した5症例は、チャレンジテストでは陰性であった。
結論:2症例の即時型アレルギー反応は血清IgEが関与しなかった。遅延型アレルギー反応による副作用を証明できたのは、197症例中1例のみであった。よって、局所麻酔薬による真性アレルギー反応はごくまれなものである。
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