良性疾患 (涙嚢炎・涙石症) と臨床診断された病変の 0.6% は悪性腫瘍であった。
デンマークにおける90年間の病理データの再調査結果です。
涙道疾患: デンマークにおける1910年から1999年までの生検標本 643検体の臨床病理学的研究
Acta Ophthalmol Scand. 2005 Feb;83(1):94-9.
Lesions of the lacrimal drainage system: a clinicopathological study of 643 biopsy specimens of the lacrimal drainage system in Denmark 1910-1999.
Marthin JK, Lindegaard J, Prause JU, Heegaard S.
Eye Pathology Institute, University of Copenhagen, Frederick V's Vej 11 I, 2100 Copenhagen, Denmark.
目的: 1910年から1999年までの間、デンマークにおいて組織学的に確認された涙道疾患の頻度および、臨床診断と病理診断との相関性を確定する。
方法: コペンハーゲン大学 Eye Pathology Institute において涙道疾患と記載されたファイルの中で、1910年から1999年までの全病理レポートを調査(後向レビュー研究)した。さらに、病理データベース Danish Pathology Database の涙道疾患に関するレポートをすべて調査した。初期診断が涙嚢炎の症例を除く、すべての検体を再検査した。全体の25%の検体を再検査した。
結果: 合計 643 病変を収集した。涙嚢炎が最も多く 508症例 (79%) であった。他の症例は、涙石症 dacryolithiasis (62 例; 7.9%), 腫瘍 (29 例; 4.5%), 外傷 (19 例; 3.0%), 先天奇形 (9 例; 1.4%), 涙小管炎 (8 例; 1.2%), 肉芽腫性炎症 (8 例; 1.2%)と診断された。
腫瘍 17検体は悪性であり、B 細胞リンパ腫が最も多かった ( 6症例)。涙嚢炎/涙石症と臨床診断された症例の 0.6% は、疑いのない悪性腫瘍であった。微生物が涙嚢炎で見つかることはまれであったが (9%)、涙石症の症例では微生物がよくみられた (87%)。
結論: 涙嚢炎は病理組織学的検査を依頼される涙道系疾患として圧倒的に多いものであった。涙石症は、しばしば微生物、特にグラム陽性桿菌と関連性があった。腫瘍疑い例の半数以上は炎症性病変であり、腫瘍はときどき炎症のような臨床像を呈する (masquerade)ので、病理組織学的検査は診断確定や腫瘍発見のために必要である。
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