白内障術後に複視を来たすことがあります。その原因として、術前から存在していた斜視、融像機能の障害、局所麻酔薬の副作用(筋毒性)、眼内レンズの偏位や傾斜、黄斑部網膜の病変、後嚢混濁、虹彩欠損などが報告されています。
参照論文:
Yan Ke Xue Bao. 1997 Dec;13(4):210-2.
Zhonghua Yan Ke Za Zhi. 1999 Nov;35(6):449-52.
このうち、局所麻酔薬の筋毒性を軽減させるために注射液 ヒアルロニダーゼを混合する方法がよく知られています。
ただし、ヒアルロニダーゼは即時型アレルギーを惹起することがあり、使用前に皮膚テスト(プリックテストなど)による安全性のチェックが望まれます。
Am J Ophthalmol. 2004 Jul;138(1):142-3.
Angioedema related to the use of hyaluronidase in cataract surgery.
Eberhart AH, Weiler CR, Erie JC.
Department of Ophthalmology, Mayo Clinic, 200 First Street SW, Rochester, MN 55905, USA.
[要約の邦訳は省略します]
眼球周囲麻酔後の垂直複視: ヒアルロニダーゼの役割
J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2004 Jan-Feb;41(1):25-30.
Vertical diplopia following peribulbar anesthesia: the role of hyaluronidase.
Strouthidis NG, Sobha S, Lanigan L, Hammond CJ.
West Kent Eye Centre, Princess Royal University Hospital, Orpington, United Kingdom.
[要約の邦訳]
目的: 他に合併症のない白内障手術における眼球周囲麻酔後の垂直複視の発生率を推算し、眼球周囲注射にヒアルロヒダーゼを混合することが垂直複視の尤度(ゆうど)に影響するか確認する。
方法: 術後複視を来たしたケースを確認するために、眼球周囲麻酔による水晶体超音波乳化吸引術施行例 連続940件について後向き調査を行った。複視の性状や発症時期、麻酔手技、ヒアルロニダーゼの有無を確認するために症例記録を調査した。Hess チャートにより進行パターンを比較した。
結果: 垂直複視は 6症例にみられた (発生率, 0.64%)。全例、注射眼に術後直ちに上斜視が起こり、4週から 6週の期間内に上転制限を伴う下斜視に移行した。全ての麻酔は 2% リドカインを含む25mm, 25ゲージ針を使用し、麻酔科医、専門医, 彼らの直接の監督下でレジデントによって実施された。ヒアルロニダーゼは435例 (46%)の注射液に混合され、505例 (54%)では未使用であった。垂直複視を呈した全 6症例はヒアルロニダーゼを使用しなかったグループであり、有意な関連性があった(χ² 検定 chi-square, 5.22; P = .023)。
結論: 術後垂直複視のリスクを減少させるために眼球周囲麻酔時にヒアルロニダーゼを使用すべきである。
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