鈍的眼外傷後に急性網膜壊死を合併することは稀とされています。網膜壊死は重篤な合併症の1つですが、報告論文は実際には少ないようです。また、眼外傷時の打撲壊死 contusion necrosis が黄斑円孔形成や網膜剥離発生などの重篤な眼合併症に関与することがありますので、ご注意下さい。
医学用語:
contusion necrosis 打撲壊死
postcontusion retinal necrosis 打撲後網膜壊死
concussion necrosis 振盪壊死 (日本の実験論文[4]のみ?で使用)
網膜壊死部は経過とともに網膜・脈絡膜の萎縮に至り、高度の視機能障害が残ります。しかし、受傷直後であれば、下記の一過性で自己限定的な「網膜振盪症」と検眼鏡的に区別することは困難です。鑑別診断のためには蛍光眼底造影などの検査が必要です。
commotio retinae 網膜振盪症
Berlin's edema (ベルリン浮腫・混濁)ともいわれます。視力は一時的に 0.1程度にまで低下することもあるそうですが、経過・回復ともに良好で数日から数週以内に病変は自然消失します。特に治療を要しません。
報告論文(一部):
[1] 外傷性黄斑円孔治療における硝子体網膜手術の役割
Retina. 1997;17(5):372-7.
The role of vitreoretinal surgery in the treatment of posttraumatic macular hole.
Garcia-Arumi J, Corcostegui B, Cavero L, Sararols L.
Universidad Autonoma de Barcelona, Hospital Universitario Valle Hebron, Spain.
目的: 硝子体網膜手術が外傷性黄斑円孔を閉鎖し結果的に視力を改善させることに成功するか決定する。鈍的外傷により硝子体が網膜から分離したり、打撲壊死 や中心窩下出血を来たすと、黄斑円孔が形成されることがあります。特発性黄斑円孔のように、外傷性黄斑円孔はリング状の網膜下液層によって囲まれ、高度の視力低下を来たします。
[方法, 結果, 結論: 邦訳は省略します]
[2] ゲーム "paint ball"の危険性
Bull Acad Natl Med. 1994 Apr;178(4):671-7; discussion 677-9.
The danger of the game called "paint ball"
Gazagne C, Larricart P, Haut J.
Service du Pr Haut-CHNO des Qunize-Vingts, Paris.
[要約の抄訳]
玩具の機関銃に無害な色素を充填した小弾丸を使用するフランスでの戦争ゲーム "paint ball"で誤って眼部に被弾し、一例は部分的な網膜壊死から網膜剥離を来たしたため、眼内手術と一時的な硝子体内シリコン充填術により網膜復位が得られました。外傷性白内障を来たし水晶体摘出術などを行ったケースなど合計 6症例を報告します。
[3] 鈍的眼外傷後の網膜壊死
Klin Monatsbl Augenheilkd. 1996 Aug-Sep;209(2-3):150-2.
Retinal necrosis after blunt bulbus trauma
Hesse L, Bodanowitz S, Kroll P.
Univ.-Augenklinik Marburg.
症例: ボールによる眼外傷例 1症例 (20才, 男性, 左眼)の報告。視力は 1.0で前眼部は正常でした。網膜振盪症によって囲まれた広範な網膜壊死 が上耳側網膜にみられ、部分的な網膜剥離を伴っていました。網膜剥離は2週間後には治療を行うことなく復位し、特徴的な顆粒状色素沈着が残りました。網膜裂孔の辺縁は網膜光凝固術による治療を行いました。
[背景, 結論: 邦訳は省略します]
[4] 家兎眼による実験的振盪壊死のインドシアニン・グリーン血管造影所見
Nippon Ganka Gakkai Zasshi. 1993 May;97(5):587-94.
Indocyanine green angiography of experimental concussion necrosis in rabbit eyes
Department of Ophthalmology Osaka City University Medical School, Japan.[要約の邦訳は省略します]
[5] 打撲後網膜壊死
Ber Zusammenkunft Dtsch Ophthalmol Ges. 1977;74:241-4.
Postcontusion retinal necrosis
Witmer R.
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