瞳孔緊張症 (アディー瞳孔)と深部腱反射の消失(アキレス腱の反射消失が最も多く、診断に際してとても重要な所見です)が同時にみられるとき、Adie 症候群(ないし、Holmes-Adie 症候群)とよばれます。
何らかの原因で「節後性副交感神経麻痺」が眼球に発生すれば、特徴的な瞳孔の異常となり、何らかの原因で多発性神経症(polyneuropathies)になれば、瞳孔の異常とアキレス腱などの神経反射障害が同時に起こります。
原因疾患は数多く知られています。文献調査をすると、重症筋無力症, シェーグレン症候群, 水痘, Charcot-Marie-Tooth病, 強皮症, ライム病, 片頭痛, 悪性腫瘍, 単純ヘルペス感染症など次々と病名がヒットします。
深部腱反射が障害されない分節性顔面無汗症と瞳孔緊張症: 新しい自律神経障害
J Neuroophthalmol. 2005 Mar;25(1):5-8.
Segmental facial anhidrosis and tonic pupils with preserved deep tendon reflexes: a novel autonomic neuropathy.
Kalapesi FB, Krishnan AV, Kiernan MC.
Department of Ophthalmology, Prince of Wales Clinical School, University of New South Wales, Sydney, Australia.
[要約の邦訳]
労作時の右顔面半側の顔面紅潮と発汗の症状が 31才の女性にみられた。 光が当たっても縮瞳しない軽度の散瞳 (瞳孔散大)所見および緊張性近見反応・再散瞳が診察により観察され、Adie 症候群 syndromeに一致する臨床像であった。他の神経学的検査は正常であり、深部腱反射は保たれていた。脳および脊椎のMRI Magnetic resonance imagingは正常であった。
片側性に汗腺神経系および血管運動神経系の障害がみられ、眼部の交感神経支配に障害がないとき、Harlequin 症候群 syndromeの診断条件を満たす。Harlequin 症候群とAdie 症候群との合併は、Ross 症候群 syndromeとよばれますが、自験例では「深部腱反射低下なし」のため、Ross 症候群の診断から除外されます。本症例は以前に記載されたことのない異型であり、自律神経障害のスペクトラムに複雑性が加わることになる。
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