Struck HGら(1992年)の独語論文「慢性涙小管炎の診断と治療」:
Zur Diagnostik und Therapie der chronischen Canaliculitis.
[英文タイトル Diagnosis and therapy of chronic canaliculitis]
Ophthalmologe. 89(3):233-236.
Struck HG, Hohne C, Tost M.
Klinik und Poliklinik fur Augenkrankheiten, Universitat Halle/Saale.
の抄訳は、
» http://cgi12.plala.or.jp/yamamura/topics/index.cgi?page=33
をご覧下さい。本論文において、慢性涙小管炎H04.4 の治療法として、薬物療法とともに「涙小管切開術 (涙小管の管壁を切開する手術)」が推奨されています。2004年、涙小管切開術の長期的な転帰に関する論文が英国の医療機関から発表されましたので、論文要約をお伝えいたします。本疾患の起炎菌として、以前からアクチノミセス属の細菌「放線菌」がよく知られていますが、下記論文では放線菌の検出率は低かったようです。
涙小管炎: 涙小管切開術後に長期の涙流(症)を来たす頻度
Orbit. 2004 Mar;23(1):19-26.
Canaliculitis: the incidence of long-term epiphora following canaliculotomy.
Anand S, Hollingworth K, Kumar V, Sandramouli S.
Wolverhampton & Midland Counties Eye Infirmary, Wolverhampton, West Midlands, UK.
[要約の邦訳]
目的: 涙小管炎の手術治療後の長期的な転帰をレビューする
方法: 1995年1月から2001年12月までの期間に手術治療を行った涙小管炎全症例を手術記録で確認した。症例記録は後向きに調査し、特に診断の遅れ (診断前に2回以上の受診を要したとき、と定義した)、培養結果、手術後の転帰をレビューした。電話による問診表調査は、治療後の涙流(症)の頻度を評価するために利用した。症状を有する患者には、より一層の評価と治療を行うため、診察予約を提示した。
結果: 合計15症例 15眼, 女性13例, 男性 2例が確認された。平均年齢は 69.6才 (年齢分布 45-87才)であった。1症例は片眼の上・下の両涙小管炎を呈していた。他の 14例 (93.3%)は 下涙小管炎 であった。診断が遅れた症例は、15例中 7症例 (46.6%)であった。細菌培養結果では、ぶどう球菌 Staphylocococcus spp. は 66.6%に検出され、最も多い分離株 (26.6%)であった。放線菌 Actinomyces は15例中 2症例 (13.3%)のみから分離された。保存療法は 5症例 (33.3%)に試みられた。涙小管切開術 canaliculotomy の後、全症例の諸症状は解消した。流涙(症) epiphora は電話による問診調査にて治療眼 4眼で確認された。このうち、3眼には既存(先在)の涙道疾患があった。追跡調査は、平均 26か月 (調査期間 6-83か月)であった。
結論: 涙小管切開術は、術後涙流(症)の明白なリスクとならない安全で効果的な涙小管炎治療法である。
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