Coffeyら (1991年,米国)による総説論文を中心にお伝えいたします。残念ながら、他学者の最近の報告においても指摘されていますが、間歇性外斜視に関する論文は、正しい科学的・統計学的手法で研究がなされたものは殆どなく、たとえば、治療法の優劣を正しく評価できないということです。また、個々の治療法の成功、不成功は、研究者独自の基準で決められておりますので、治療法の成功率も施設間で当然異なってしまいます(特に、手術治療に関しては顕著です)。
注 間歇性外斜視の治療法とエビデンスに関するコクラン・レビュー をご覧下さい。
治療法
1. 過矯正レンズによる治療(実際の近視度数より強い眼鏡ないしコンタクトレンズを使用する.例えば2~4D以上):成功率 28%(3論文 60/215症例) 視能矯正の併用により治療効果は増強したとの報告あり。年長児や成人は疲れる。調節力のなくなった中・高齢者は効果なし。治療を中断できない。時に遠近レンズを用いる。手術前に一時的に、または、訓練できない小児に使用することがある。
2. プリズムを使用する治療法(光を偏光する膜プリズムないしプリズムレンズ):成功率 28%(8論文 56/201) 術前、術後の機能改善目的で使用することが多い。中和プリズム、過剰なプリズム度数どちらかを使用。美容的な問題あり。単独では効果乏しい。
3. 遮蔽訓練:成功率 37%(7論文 63/170) 網膜異常対応、抑制の治療のために、1日1時間から数時間。悪化した症例あり。
4. 手術治療:成功率 46%(28論文 1171/2530) 25歳以上の症例では、成功率 52% (6論文 1015/1939)。美容目的では 成功率 61% (7論文 248/406)、機能目的では成功率 43% (923/2124)。手術不成功率として発表されているものでは、32%(662/2060)が不成功。手術術式として両眼の外直筋後転術などが多い。成功率は過去35年の論文では12~89%となる。輻輳不全のタイプや20プリズム以下の斜視の手術については依然議論あり。2回以上の複数回手術は、45~50%の症例に行われている。また、術後、斜視角が低矯正または過矯正となるケースでは、1.2.5 の治療法を併用することがある。
5. 視能矯正:成功率 59% (17論文 433/740) 成功率は機能的 43% 美容的 61%。4,5を同じ成功基準で比較した論文によると、成功率は 視能矯正単独 53% (128/242) 手術単独 41% (151/367)であった。Cooperらによる報告では、25プリズム以上の強い斜視症例は対象から除外すると、成功率は 視能矯正単独 59%(182例中)手術単独 42%(264例中)両者併用 52%(216例中)であった。視能矯正の訓練内容は、輻輳訓練、抑制除去訓練であり、入院の上訓練指導し、その後自宅訓練となる。
以上(著者らが調査した論文は1991年以前の過去25年間に英語で書かれたものです。)
なお、手術早期に術後再発を予測できるとの論文もありましたが、予期に関して否定的な論文もあります。
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