視神経の近くに発生する成人・眼窩内海綿状血管腫 2論文の抄訳です.
イタリアからの症例報告です(血管腫13例)。症状自覚から医療機関受診まで:2ヶ月から6年。症状:眼球突出 84.6% 視力低下(ないし複視) 77% 眼痛・頭痛 38.4% 視神経が萎縮している症例なし。
手術例13症例(1例は偶然検査で発見されたため自覚症状はなかったが、検査上徐々に増大したため手術を希望)。全例、開頭術によるアプローチを選択し、完全摘出成功。腫瘍の大きさ:直径約1.5~3.5cm。術中・術後合併症なし(術後1~6年経過観察中) 再発なし。結果:[良好]10例(視力、眼球運動は正常、頭痛なし、眼球突出は著明に改善ないし消失)[ほぼ良好]2例(視力・視野障害は回復しなかったが、眼球突出は改善した)[悪化]1例は、術後6ヶ月目に網膜の血行障害を来たし視力は低下した。一般的に、徐々に大きくなり、周囲組織を圧迫したり、眼球が押し出されます。ある年齢以降に進行を停止した症例、症状が出現しないケースもあり、妊娠中に病状が進行することもあります。女性61%以上、50歳代に多いことから、内分泌ホルモン(女性ホルモン)の影響が考えられています。手術による血管・組織侵襲により、視力が低下したり、まぶたが下垂することも報告されています。手術時、完全摘出が望まれますが、部分切除であっても症状は改善し、再発はまれであるとのことです。脳内にできる血管腫とは異なり、腫瘍内に出血することはないので、急激な増大はない。手術に際して、腫瘍の位置から最も切除しやすいアプローチ方法を推奨しています。放射線治療は無効です。また、乳幼児の瞼などにできる血管腫(自然縮小する異なる組織型)では、大きくなり弱視のリスクが発生すると、ステロイド剤を局所注射しますが、本腫瘍では無効です。
[文献]
Acciarri N, Giulioni M, Padovani R, Gaist G, Pozzati E, Acciarri R. Orbital cavernous angiomas: surgical experience on a series of 13 cases. J Neurosurg Sci 1995;39:203-9.
別論文、66症例の検討(米国)では、手術時のアプローチは全例、眼窩側(前方ないし外側アプローチ)です。周囲健常組織からの剥離は容易で、完全摘出例がほとんどです(部分切除は2例のみ)。術後平均10年の経過観察中、再発例1例のみ(完全摘出)で、術後15年目に再手術し、その後25年は再発していません。
主症状はイタリアの報告例同様、眼球突出72%です。進行度に個人差が大きいのですが、平均すると1年当たり2mm 眼球が前方に突出したことになります。
[文献]
Harris GJ, Jakobiec FA. Cavernous hemangioma of the orbit. J Neurosurg 51:219-228, 1979.
合計79症例となりますが、視神経に接するような位置にあることがほとんどですので、「近いから失明する手術リスクが大きい」という主治医の説明は論文とは矛盾します。
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