加齢黄斑変性(症)に対する血管新生抑制薬「Anecortave acetate」単剤治療
半年毎の眼局所注射だけで、視力安定化、高度視力低下の予防、視力改善、中心窩下脈絡膜新生血管の抑制効果等が実証されました(臨床試験)。
Ophthalmology. 2003 Dec;110(12):2372-83;
Anecortave acetate as monotherapy for treatment of subfoveal neovascularization in age-related macular degeneration: twelve-month clinical outcomes.
D'Amico DJ, Goldberg MF, Hudson H, Jerdan JA, Krueger DS, Luna SP, Robertson SM, Russell S, Singerman L, Slakter JS, Yannuzzi L, Zilliox P; Anecortave Acetate Clinical Study Group.
Anecortave acetate はコルチゾール誘導体の1つですが、糖質コルチコイド活性を有しないように、化学構造式の一部を変化させた合成ステロイド剤です。血管内皮細胞の移動に必要な酵素"プロテアーゼ"を抑制するため、本薬剤が作用すると、血管の新生・増殖が抑制されます。
対象・方法
参加症例数:128症例(治療眼128眼)
1999年4月から2001年5月までの期間に米国、ヨーロッパ18施設で参加登録が行われた。
常に片眼のみ治療対象とした。
Anecortave acetate 30mg, 15mg, 3mg, プラセボ(偽薬)投与群の4群にランダム化割付が行われた。
対象年齢:登録基準 50歳以上。
全例白人
【方 法】
初回注射量(注射部位:眼球壁の外側【強膜上】後方) 例 15mg/0.5ml
点眼麻酔だけで注射を行います。(注:注射法の詳細は省略します)
6ヶ月後に同量再注射(使用薬剤を知っている医師が行った)。
結 果
※開始時⇒12ヶ月後の参加者数(ドロップアウト率)
治療群 98症例⇒59症例 (40.8%)
30mg 33症例 ⇒21症例 (36.4%)
15mg 33症例 ⇒17症例 (48.5%)
3mg 32症例 ⇒20症例 (37.5%)
対照群 30症例⇒18症例 (40.0%)
※サブグループ "predominantly classic"(病巣に占めるCNV "classic" の比率50%以上)
治療群 76/98 (77.6%)
30mg 26/33 (78.8%)
15mg 25/33 (75.8%)
3mg 25/32 (78.1%)
対照群 26/30 (86.7%)
一年後(合計2回注射)には、対照群(偽薬注射群)と比べて、下記のとおり明らかな差があった。
Anecortave acetate 治療群 30mg, 15mg, 3mg の中で15mgが最も優れていた。
以下の成績は期間、投与量の未記入(省略)時 12ヶ月後、一回投与量15mgのものです。
■全体の評価:
【視力】
15mg治療群は、6, 7.5, 9,および12ヶ月(P=0.0131)の時点で対照群に比べて、平均視力変化量(logMAR視力)が有意に少なかった。対照群に比べて、12ヶ月時点でおよそlogMAR視力2ラインの差が生じた。
【視力の安定化】
「視力の安定化」を"logMAR視力での変化量3ライン未満"と定義すると、その頻度は、治療群79%、対照群53%であった(P=0.0323)。
高度視力低下例(logMAR視力で6ライン以上の変化があったとき)は、治療群わずか3%、対照群23%であった (P=0.0224)。
■サブグループの評価:血管造影所見にて病巣が"Predominant Classic"タイプの症例について(注:病巣の50%以上がClassic CNVで占められているもの)
【視力】
15mg治療群は、6, 6.5, 7.5, 9,および12ヶ月(P 0.0102以下)の時点で対照群に比べて、平均視力変化量(logMAR視力)が有意に少なかった。
12ヶ月の時点で、logMAR視力の低下(平均)は、治療群1.1ライン、対照群3.4ライン であった。
【視力の安定化】
視力の安定化(logMAR視力での変化量3ライン未満)した症例は、治療群84%、対照群50%であった(P=0.0100)。
高度視力低下例(logMAR視力で6ライン以上の変化があったとき)は、治療群0%、対照群23%であった (P=0.0299)。
■ 視力改善
logMAR視力で2ライン以上改善した症例の頻度は、全体、サブグループともに治療群が多く、特に6ヶ月時点で有意差があった。
■ 脈絡膜新生血管(CNV)所見
全体、"Predominant Classic"タイプ ともに、治療群でCNVの消失、改善が多くみられた。
■ 臨床使用上の安全性
1999年4月~2002年7月の期間中に観察できた有害事象は、一般的には一過性、軽度であった。1例のみ臨床試験を中止した(軽度の視力低下例で、治療との関連性はなく、症状は持続した)。
白内障と視力低下(logMAR視力で4ライン以上の変化)はよくみられたが、治療群、対照群すべての群、両眼に起こった。
眼局所注射に関連し、多くみられた症状は、眼瞼下垂、眼痛、結膜下出血、目のかゆみ、目の充血、目の異物感で、一般的に、一時的、軽度であった。
また、副作用として、治療群では、軽度の視覚障害(15%)、異物感(7%)が多かった。対照群では0%であった。前者は治療眼、他眼にともにみられ、臨床試験中にランダムに発生した。後者は、眼球周囲麻酔のときにみられるものである。
薬剤に関連した重篤な副作用はなかった。
特に、眼圧上昇例はなかった。水晶体変化(白内障)は、治療群27%、対照群30%で、両群間で有意差はなかった。
重篤な有害事象28症例45報告のうち、薬剤と関連のあるものなし
(治療群18例、対照群 10例)
全群において、死亡例5例であった(事故 1, 心不全 1, 心筋梗塞 2, 肺がん 1)。
糖質コルチコイド活性があれば出現する眼副作用、全身副作用はなかった。
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