頭蓋内圧低下症は、低髄液圧症候群、脳脊髄液減少症ともいわれる。原因不明の場合、特発性頭蓋内圧低下症 (SIH) などと呼ばれる。最近、むちうち症程度の軽い外傷であっても髄液が漏れ出すことがわかり、本疾患と診断された場合、従来の硬膜外ブラッドパッチ治療が注目されている。
参照ページ: http://www.yomiuri.co.jp/iryou/renai/20040505sr11.htm [リンク切れ]
脳脊髄液減少症、頚部捻挫(むちうち症)は、ともに眼症状を来たす。
脳脊髄液減少症による眼症状は、かすみ、視力低下、一時的な霧視、非特異的周辺視野欠損、第6脳神経麻痺(外転神経麻痺)、複視(ものが2つにみえる)、眼振(眼球が揺れる)、羞明(まぶしい)、読書困難、飛蚊症様の症状、目の焦点が合わないなどであり、SIH患者の10~20%に出現するようである。患者本人の血液(血のり)で漏孔を塞ぐブラッドパッチ治療などにより髄液圧が回復すると、症状は完治ないし改善する。
頚部捻挫 (むちうち症)による眼症状として、Burkeらは下記論文において、25.6% (10/39症例中)に眼症状がみられ、主な症状は輻輳障害と調節力の障害によるものであったとしている。以前からよく知られている頸部交感神経節の障害による自律神経障害(ホルネル症候群)はなく、他論文においてもまれであった。輻輳・調節力障害の原因は今だ充分に解明されていないが、脳幹部レベルの異常ではないかといわれている。他に、上斜筋麻痺、立体視機能の低下、両眼の後部硝子体剥離を来たしたケースがあり、9ヶ月以内に2例を除いて、症状は完全に消失している。改善しなかった1例は、後部硝子体剥離のケースで、眼内の硝子体混濁による飛蚊症が続いている。実際臨床では、眼科未受診で自然治癒する軽症のケースも多いので、眼症状は一般的に軽症で経過も良いことが多いと考えられている。
■ むちうち症 (Whiplash)による視覚系への影響
邦訳ページ
エントリー「Whiplash 頚部捻挫 むちうち症 と眼症状」
» http://www.qqiac.com/2004/11/whiplash__24b5.html
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 1992;230(4):335-9.
Whiplash and its effect on the visual system.
Burke JP, Orton HP, West J, Strachan IM, Hockey MS, Ferguson DG.
Department of Ophthalmology, Royal Hallamshire Hospital, Sheffield, United Kingdom.
■ 硬膜脳脊髄液漏による特発性頭蓋内圧低下症にみられる神経視覚系所見
邦訳ページ
エントリー「特発性頭蓋内圧低下症 ( SIH )」
» http://www.qqiac.com/2004/10/_sih__8059.html
Ophthalmology. 1994 Feb;101(2):244-51.
Neurovisual findings in the syndrome of spontaneous intracranial hypotension from dural cerebrospinal fluid leak.
Horton JC, Fishman RA.
Department of Ophthalmology, University of California, San Francisco 94143-0730.
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