癌治療薬 (抗悪性腫瘍薬) を使用し、生体の免疫反応を抑制する治療は、cytotoxic immunosuppression とよばれていますが、適切な日本語がないので「殺細胞性免疫抑制治療」と訳します(注 1)。下記論文は、ステロイド薬や非ステロイド性消炎薬を10年間使用した症例に比べて、cytotoxic immunosuppression 治療例の方が全身、眼局所の予後が良いことを死亡率などで比較した論文 (Fosterら, 1984年)です。なお、現在では免疫抑制薬として画期的な新薬が多く開発され、より免疫抑制治療も進歩していますが、壊死性強膜炎などの重篤な眼合併症を伴う慢性関節リュウマチ症例では、充分な薬物治療が必要であることに今も変わりはありません。
壊死性強膜炎ないし周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ患者の死亡率. 全身性免疫抑制の効果.
Ophthalmology. 1984 Oct;91(10):1253-63.
Mortality rate in rheumatoid arthritis patients developing necrotizing scleritis or peripheral ulcerative keratitis. Effects of systemic immunosuppression.
Foster CS, Forstot SL, Wilson LA.
[論文要約の邦訳]
壊死性強膜炎、周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ 34 症例を対象とし、殺細胞性免疫抑制薬による治療(注 1) と ステロイドおよび非ステロイド性消炎薬による治療 の眼局所および全身的効果を比較した (非ランダム化臨床試験)。
通常治療を行った17症例中9例は、10年間の臨床試験中に血管に関連した事象により死亡した。17症例中13例では、眼炎症が進行し、5例では、致死的ではなかったが眼外の血管炎病変を来たした。
長期間に及ぶ免疫抑制薬治療を行った17症例中1例は、10年間の臨床試験中に死亡した。本症例は免疫抑制薬中止後に死亡した。免疫抑制薬を使用した患者は、治療中には眼外の血管炎を来たさず、眼部の破壊的病変の進行もみられなかった。
本臨床試験より、壊死性強膜炎ないし周辺部角膜潰瘍を来たした慢性関節リュウマチ患者において、眼部は 潜在的で致死的な全身性血管炎の鋭敏な指標 であることを強調したい。死亡率のデータから、殺細胞薬はこれら症例にとって全身と眼部の予後を有利な方向に変化させる可能性を強く示唆している。
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