夢の中の痛みに関して、Nielson, Zadra らの2編の論文 (要約) を紹介いたします(同施設、カナダ)。
1993年の第一論文では、睡眠中の被験者に体性感覚刺激を与えると、夢の中で痛みを感じたというものです。
1998年の第2論文では、185名を対象とした後向き調査と2週間の夢の記録から、夢で経験する痛みの頻度と性質を報告しています。半数近くの参加者が過去に同様の夢を感じており、2週間、合計 3,045回の夢記録中、はっきりとした痛みを伴う夢 18回が含まれていたそうです。
注) 残念ながら、邦訳者(私) は心理学や夢・精神分析については専門外ですので、2編の論文中の専門用語の邦訳や文意などは不正確かもしれません。よって、詳しい内容にご興味がある方は、是非、専門家にお尋ねください。
Sleep. 1993 Aug;16(5):490-8.
Pain in dreams.
Nielsen TA, McGregor DL, Zadra A, Ilnicki D, Ouellet L.
Laboratoire du Sommeil, Hopital du Sacre-Coeur de Montreal, Quebec, Canada.
[要約の邦訳]
"夢の中での痛み pain in dreams" については、殆ど知られていない。いくつかの研究では、まれなことであり、夢をみるという表象能力では説明できないかもしれないと言われている。しかしながら、今回の研究では、レム睡眠 (REM Rapid Eye Movement sleep)中に与えた体性感覚刺激により、実験中偶然に、夢で感じた痛み( dreamed pain )体験が得られたので報告する。
今回の研究中に夢で感じた痛みを1回でも経験した5人の中から、「夢」を選別した。被験者は、20回の夜で42回の刺激試験を受け、合計13回 (31%)の夢(単回ないし複数回の痛みに関連した)を報告した。
殆どの場合、刺激によって誘発された現実の感覚が直接的に変化することなく夢に組み込まれているようであった。痛みは、これらの夢の大部分において、主要な動機となっており、多くのケースで激しい感情--典型的なものは怒り--と関連していた。
しばしば、夢は痛みから解放される(軽くなる)被験者の試みを描いていた。数名においては、その行動は反復されており、他の被験者では、その目的は比喩的に夢の中で演出されていた。
この結果から、痛みは夢の中では稀であるが、それでも夢をみるという表象的コードに一致している。さらに、痛みと夢内容の関連性から、レム睡眠 (REM Rapid Eye Movement) 中の有痛刺激の制御において、脳幹や大脳辺縁系の中枢が深く関わっているのかもしれない。
Pain Research and Management.1998;3(3):155-161.
http://www.pulsus.com/Pain/03_03/zadr_ed.htm
The nature and prevalence of pain in dreams
AL Zadra, TA Nielsen, A Germain, G Lavigne, DC Donderi
[要約の邦訳]
背景,目的: (邦訳を省略します.)
方法: 研究参加者 185名が質問表すべてに回答し, 2週間でみた夢を記録した。
結果: 質問表を用いた後向き調査では、50%に近い参加者が、少なくても1回は夢の中で痛みを経験している。自宅でみた計3045回の夢の記録の中で 18回の夢において、はっきりした痛みのことが含まれていた。
考案: 夢の中での痛みの感覚は、身体の特定の部位に限局し、リアリスティクに報告されており、典型的には、(夢の中で)暴力的な出来事に遭遇したことで感じ、しばしば、激しい情緒変化を伴っている。痛みのような感覚的な経験が夢の中でどのように発生するかについての説明モデルを提案する。
結論: 痛みのイメージ表現に関係する認識システムは、夢をみているときも時々機能している。
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