網膜黄斑部の内面に収縮性のある病的な膜「黄斑(部の網膜)上膜」が形成されることがあります。その成因・原因として、特発性 idiopathic epiretinal membrane (原因不明) のもの、眼球後部の血管病変・炎症性疾患によるもの、眼外傷後、網膜剥離手術後、網膜光凝固術後などが知られています。主症状は、視力低下と変視症(ものが歪んで見える)です。黄斑パッカー macular pucker, 黄斑上膜 epimacular membrane, 網膜上膜 epiretinal membrane, 網膜上(前)線維増殖 epiretinal gliosis は同意語 (同一疾患名)です。
網膜裂孔や裂孔原性網膜剥離に伴う黄斑上膜の手術予後
J Fr Ophtalmol. 2003 Apr;26(4):364-8.
Prognosis of surgery in epimacular membranes after retinal break or rhegmatogenous retinal detachment
Gribomont AC, Levi N.
Service d'Ophtalmologie, Cliniques Universitaires St-Luc, Universite Catholique de Louvain, 10, avenue Hippocrate, B1200 Bruxelles, Belgique.
目的: 網膜裂孔や裂孔原性網膜剥離後に発生する網膜上膜の予後は、治療・未治療を問わず、特発性のものと同じように良いとは見られていないが、しかし充分な調査は未だ行われていない。網膜上膜治療に伴う網膜合併症や機能的な治療成績について解析した。
方法: 黄斑上膜の手術例 28症例 (連続した手術ケース) を対象とした後向き研究で、経過観察期間は最短3ヶ月。黄斑上膜の再発率、術後の網膜剥離の発生・再発の頻度とともに、水晶体の状態も考慮して、術前視力と術後 3ヶ月-6ヶ月の視力結果と比較した。
結果: 2段階以上の視力改善は、28症例中16例 57% で得られた。改善症例の内訳は、白内障進行例では 36% (4/11)、術前から眼内レンズ状態の症例では 50% (3/6)、水晶体に変化がなかった症例では 80% (8/10) であった。平均 8.7ヶ月の経過観察中、黄斑上膜の再発はなかった。術後の網膜剥離の発生・再発は、25% (7/28) にみられた。
考案・結論: 今回の結果を文献報告されている特発性網膜上膜の治療成績と比較したところ、網膜裂孔や裂孔原性網膜剥離後に発生する黄斑上膜においても良好な手術予後が得られた。
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