Peters Anomaly
http://www.emedicine.com/oph/topic112.htm
Author: Guruswami Arunagiri, MD, FRCS, Consulting Staff, Department of Ophthalmology, Geisinger Medical Center
[上記ホームページの一部を邦訳しました。本疾患について詳しく記述されている原文をご一読下さい]
Peters 奇形は、前房形成の異常を伴うまれな前眼部奇形です。角膜中央ないし角膜全体に異常がみられます。水晶体も混濁し角膜に接着している(タイプ2)、水晶体は角膜に接着していない(タイプ1)、2つのタイプがあります。タイプ1では、白内障を伴うことも伴わないこともあります。
遺伝することもあります。遺伝子は PAX6遺伝子です。他の眼部や全身奇形を伴うことがあります。
全身異常を伴うとき、染色体13-15トリゾミー、11q染色体の一部欠損、Norrie 病などが知られています。Krause-Kivlin 症候群では、患者は発達遅滞と顔面異形成を伴う低身長となります。Peters plus 症候群では、泌尿生殖器の異常のほか、指、頭蓋骨、心臓、神経、聴覚障害を合併します。
他の眼部異常として、近視、無虹彩、虹彩・脈絡膜コロボーマ、小眼球症、第一次硝子体過形成遺残 (PHPV)、視神経低形成などです。
角膜混濁、白内障のほか、緑内障を合併することがあります。
子宮内で妊娠第一期(10週-16週まで、USAの定義)に発現します。10週とは前眼部の発生が終わる時期で、16週とはデスメ膜(角膜内組織)がほぼ完成する時期です。
Peters奇形に必発の所見は、角膜中央の実質(ないし、全体)の混濁です。通常、混濁内には血管がなく、他の先天性角膜疾患と鑑別する際に参考となります。タイプ1 では、症例の80%は両眼性です。角膜中央ないし傍中心部の輪状混濁を呈します。周囲角膜は透明ないし緑内障に伴う浮腫がみられます。虹彩索状物はしばしば角膜後面に付着しています。角膜混濁の原因は、病変部の角膜内皮およびデスメ膜の先天性欠損によるものです。
タイプ2 は通常、両眼性です。角膜混濁は強く、中央ないし偏心性にみられます。通常、白内障を呈し、典型例では角膜に接しています。角膜の実質後部、デスメ膜、角膜内皮が欠損しています。虹彩の索状物は存在することも存在しないこともあります。タイプ1 に比べて、他の眼部や全身異常の合併頻度はより高くなります。
他の眼部異常として、小角膜、扁平角膜、無虹彩症、隅角の形成異常による緑内障を伴うことがあります。緑内障は90%の症例にみられます。虹彩や脈絡膜のコロボーマ、PHPV、視神経低形成、視神経萎縮を来たすことがあります。Goldenhar 症候群の合併例 1例が報告されています。
原因は不明です。遺伝因子、環境因子の両方が考えられます。(眼球の)前房が形作られる妊娠第1期に発育障害が起こると発生します。
多くのケースは散発性、ないし常染色体劣性遺伝です。まれに、常染色体優性遺伝です。
治療:眼科的には、緑内障が非常に多い(合併頻度90%まで)。FDAが推奨する治療薬はありません。小児緑内障専門医による管理をおすすめします。
外科治療として、周辺部角膜が透明な症例では、周辺虹彩部の光学的虹彩切開が行われることがあります。両眼に視力障害を来たしうる角膜混濁があれば、全層角膜移植術を推奨します。弱視予防のため、できるだけ早期(たとえば、生後3-6ヶ月)の手術がよい結果が得られています。白内障を合併している症例では、水晶体摘出、硝子体手術が必要です。術後の無水晶体眼に対して、コンタクトレンズや眼鏡の装用が必要です。緑内障に対するろ過手術、冷凍凝固術、シャント術が薬物治療では眼圧コントロ-ルできなくなった症例で必要となる可能性があります。
予後: 角膜移植を早期に行うと、弱視予防のチャンスが増えます。角膜移植術に関する多くの報告では、視力は 0.25 (20/80)以下です。一部報告では、0.5 (20/40) とされています。多くの報告では、移植(ドナー)角膜の透明性維持は10年後で30-50%です。白内障や緑内障を併発した症例では、予後は悪くなります。
[参照エントリー]
エントリー「Peters 奇形」:
http://www.qqiac.com/archives/000101.html
エントリー「Peters 奇形 緑内障手術 角膜移植手術」:
http://www.qqiac.com/archives/000104.html
エントリー「神経堤 neural crest と角膜内皮」:
http://www.qqiac.com/archives/000102.html
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