ヒートストローク heat stroke のアップデート情報をお知らせします。
体温が上昇し神経症状などを来たす状態のことですが、国内では「日射病, 熱射病, 熱中症・・」などと細分されており、逆に疾患理解の妨げになっているのではないでしょうか。
欧米では、文献レビューや EBM報告の度に、疾患分類, 定義, 診断・治療のポイントなどは積極的に"軌道"修正され、医学分野といえども flexibilityに富みます。これら更新情報が日本語の医学資料に反映されるまでに時間のかかること(時に, 数十年)が多いので、日本の学会や医学書で採用されている病名や分類を中心とした医療情報とは、一致しないことがあります。
ヒートストローク: 包括的レビュー
AACN Clin Issues. 2004 Apr-Jun;15(2):280-93.
Heat stroke: a comprehensive review.
Yeo TP.
The Johns Hopkins University School of Nursing, 525 N Wolfe St, Rm 457, Baltimore, MD 21030, USA.
[要約の邦訳]
ヒートストローク Heat stroke (HS) は重篤かつ生命にかかわる可能性のある状態で、中核体温 core body temperature > 40.6°C (摂氏温度)と定義されている。
HS の 2型が認められている, classic heat stroke 典型的 HS (通常、幼児や高齢者に発症する) と労作性 HS (exertional heat stroke 運動する人に多い) である。上昇した体温と神経学的機能不全が診断に際して必要であるが、十分ではない。随伴症状として、強い疲労感; 熱く乾燥した皮膚または激しい発汗; 嘔気; 嘔吐; 下痢; 失見当識 (人, 場所, 時間); めまい; 失調性運動; 顔面紅潮 がしばしば見られる。重症 HSに起こりうる合併症は、急性腎不全, DIC (播種性血管内凝固症候群), 横紋筋融解, ARDS (急性呼吸窮迫症候群), 酸-塩基障害, 電解質不均衡である。長期間の神経学的後遺症 (いろいろな程度の不可逆性脳障害) はおよそ 20パーセントの患者に発症する。HSが早期に診断され、クーリング cooling対策, 急速輸液 fluid resuscitation, 電解質置換 electrolyte replacement が適切に開始されるとき、予後は最良となる。治療の遅れが >2 hours 2時間を越えると、予後は最悪となる。
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