1日ディスポーザブルタイプ, 2週間頻回交換タイプ, 通常タイプの乱視用ソフトコンタクトレンズの多くは、プリズムバラスト・デザインが採用されています。このデザインのレンズでは、角膜の下方が低酸素状態 hypoxia になりやすい欠点があります。しかし、メーカー各社は、角膜中央での測定値以外は公表しないため、処方箋を発行する医師やコンタクトレンズ販売店の管理者も詳しい情報を知らないことがありますので、ご注意下さい。
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プリズムバラスト・デザイン: 眼表面でレンズが回転しないように、レンズの下方が厚くなっています。瞬目(まばたき)のとき、閉瞼時に下眼瞼は鼻側に数 mm移動するため、レンズが回転しようとしますが、下方の厚い部分が先に押し出されて、回転を防止します。
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ダブル・スラブオフ slab-off レンズ: 上下の眼瞼の下に入るレンズ部分を加工し薄くしたもの。
ハイドロゲル/トーリック/プリズムバラスト/コンタクトレンズ各部位の酸素透過率
Optom Vis Sci. 1996 Mar;73(3):164-8.
Oxygen transmissibility at various locations in hydrogel toric prism-ballasted contact lenses.
Eghbali F, Hsui EH, Eghbali K, Weissman BA.
Jules Stein Eye Institute, UCLA School of Medicine, USA.
[要約の邦訳]
目的: 眼表面の低酸素状態は角膜の代謝に悪影響を与えることが知られている。コンタクトレンズの酸素透過率 (Dk/L値 cmmL O2/s mL mm Hg) は酸素透過係数 (Dk値 cm2 ml O2/mm Hg mL mm Hg) をレンズ厚 (L cm)で割って得られる一次関数である。また、最近、涙液交換や涙液の混合がないとき、角膜を直接覆っているコンタクトレンズ部分の酸素透過率に角膜は敏感であることも示された; すべてのヒドロゲル(ハイドロゲル)・コンタクトレンズに当てはまる。ハイドロゲルトーリックコンタクトレンズは不均一な厚み形状のレンズのため、垂直子午線方向に沿ってレンズ厚を測定し、局所酸素透過率 (Dk/L)を算出した。
方法: トーリック・ハイドロゲルコンタクトレンズ ブランド品 6品目(プリズムバラスト・デザイン prism-ballast 5品目, ダブルスラブオフ・デザイン double-slab off 1品目)の異なる処方トーリックレンズ 16個とブランド 2品目の異なる処方球面レンズ 12個(対照レンズ)の垂直子午線方向に沿った 5か所のレンズ厚を測定した。Dk値 (38°C) は素材毎に公称のコンタクトレンズ含水率、既知の相関関係から計算した。
結果: 全レンズの平均 Dk/L値では、中央からプリズムバラストトーリックレンズの上方が最大で、トーリックレンズの下方が最低であった。
表示: 平均 +/- 標準偏差
単位: 10(-9) cmmL O2/s mL mm Hg
12 +/- 2 上部(中心から 6mm上方)
13 +/- 4 上部(中心から 3mm上方)
8 +/- 4 中央部
6 +/- 1 下部(中心から 3mm下方)
4 +/- 2 下部(中心から 6mm下方)
共分散分析法によると、プリズムバラスト・コンタクトレンズの部位別結果には統計的に有意な差があった(F = 203.11, p < 0.00005)。非プリズムバラストトーリックレンズ 1品目と球面デザインの対照レンズは、垂直子午線上での差は最小であった。
よって、結論として臨床医は、プリズムバラスト・ハイドロゲルレンズ装用中には特に角膜の下方領域の低酸素状態に対する生理的反応を十分にモニターしなければならない。
[論文結果の一部について]
プリズムバラストトーリックレンズは、ブランド 5商品 (各16枚)について調査していますが、Lens Brand B:(70%) は測定 5個所すべておいて高いDk/L値(高含水率 70%による)であったため除外し、ブランド 4商品の部位別 Dk/L値およびレンズ厚(mm)を計算しました(Table 2)。要約中の数値とは、計算上、分母・分子が異なります。
Table 1. Lens brand and power selection
Lens Brand(Water Content) » A:(45%), C:(55%), D:(55%), E:(55%)
(訳者注: Table 1 の一部のみ転載しました)
Table 2. Dk/L and thickness for brands A, C, D, and E.
8.95 +/- 1.3 0.15 +/- 0.37 上部(中心から 6mm上方)
8.92 +/- 1.9 0.15 +/- 0.52 上部(中心から 3mm上方)
6.12 +/- 2.0 0.23 +/- 0.97 中央部
4.22 +/- 0.6 0.30 +/- 1.20 下部(中心から 3mm下方)
3.40 +/- 0.3 0.40 +/- 1.56 下部(中心から 6mm下方)
(訳者注: Table 2の左端は Dk/L値, 中央はレンズ厚(mm)の平均 +/- 標準偏差。論文の数値を引用しました)
[追記 2005/12/19]
ディスポーザブル コンタクトレンズの局所酸素透過率
Cont Lens Anterior Eye. 2003 Dec;26(4):189-196.
Local oxygen transmissibility of disposable contact lenses.
Bruce A.
Clinical Vision Research Australia, Victorian College of Optometry, Corner Cardigan and Keppel Sts, Carlton 3053, Vic., Australia; Department of Optometry and Vision Sciences, University of Melbourne, Corner Cardigan and Keppel Sts, Carlton 3053, Vic., Australia.
[要約の一部、乱視用レンズに関する部分だけ抄訳]
検査対象としたコンタクトレンズは、非乱視用ディスポーザブルレンズ ブランド20品目の他、乱視用(トーリック)レンズ ブランド 8品目(屈折度数 球面 -8.00D から +4.00, 乱視度数 -1.00D/-1.25D 乱視軸 180°)であった。レンズの厚みが最大の部位での酸素透過率 (局所酸素透過率 local Dk/t value)を測定し、正常の閉瞼状態で角膜に供給される酸素量相当ないし、それを超えるとされる基準 Dk/t 12 (Fatt units. Benjamin によって規定 [Int. Contact Lens Clin. 23 (1996) 188])と比べたところ、
None of the disposable toric lenses had a minimum Dk/t of 12 or more.
最低限の酸素透過率 Dk/t値 12、またはそれ以上のディスポーザブル乱視用レンズはなかった。
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