レプトスピラ症は、梅毒やライム病などと同じく全身感染後にぶどう膜炎を起こすスピロヘータ症 spirochetal disease の1つです。ぶどう膜炎はレプトスピラ症の晩期合併症の1つで、失明原因となります。
急性期には、下記のような全身症状とともに結膜浮腫 (結膜下出血を伴うこともある)を来たします。
Curr Opin Ophthalmol. 2002 Dec;13(6):381-6.
Ocular leptospirosis.
Rathinam SR.
Department of Ophthalmology and Uveitis Service, Aravind Eye Hospital and PG Institute of Ophthalmology, 1 Anna Nagar, Madurai 625 020, Tamil Nadu, India.
[論文を抄訳しました]
全身レプトスピラ症は通常、突然発症し、頭痛, 発熱, 全身倦怠感, 筋肉痛, 結膜浮腫 (結膜下出血を伴うこともある)を来たします。85%から 90%の症例では、自己限定的な非黄疸性発熱性疾患ですが、10%から 15%の症例では、重症敗血症性レプトスピラ症 (ワイル Weil病)となります。ワイル病は多臓器不全が特徴で、死亡率は 10%から 50%です。
レプトスピラ症: レプトスピラ属の病原性スピロヘータによる人畜共通感染症 zoonotic disease
ヒトでの感染成立: 正常粘膜または擦過傷のある皮膚から血液中に入り、いろいろな臓器 (肝臓, 腎臓, 肺, 心臓, 脳, 目, 子宮, 骨格筋, すい臓など)に感染します。
感染源: さまざまな家畜や野生動物の腎尿細管に定着しており、尿中に排泄されます。また、寄生しなくても自由生活生物 free-living organism として生存できる細菌であるため、貯め池や土壌も感染源になり、絶え間ない感染拡大が起こります。
誤診されやすい病気:
インフルエンザ influenza
無菌性髄膜炎 aseptic meningitis
脳炎 encephalitis
デング熱 dengue fever
腸チフス typhoid
肝炎 hepatitis
胃腸炎 gastroenteritis
マラリア malaria
眼病変: レプトスピラ症による再発性ぶどう膜炎は、馬の失明原因の第1位といわれています。
ヒトの眼レプトスピラ症 ocular leptospirosis は、
非肉芽腫性ぶどう膜炎 nongranulomatous uveitis
前房蓄膿 hypopyon [頻度 12%]
ベール様の膜状硝子体混濁 membranous veil-like opacities
視神経乳頭浮腫 disc edema
網膜静脈周囲炎 retinal periphlebitis
の所見を呈するぶどう膜炎 uveitis が特徴です。
通常、急性ですが、ときに慢性型、再発型となります。
炎症部位が主に前眼部であれば、発症は緩徐で軽度のことがあります。汎ぶどう膜炎のタイプでは、しばしば急性、重症、再発性となります。患眼は両眼性、片眼性どちらのタイプもみられます。
[ぶどう膜炎を来たす他の主要な原因との鑑別点]
» ベーチェット Behçet 病: (眼レプトスピラ症では)網膜血管炎が再発しても、血管閉塞を来たすことはまれです。
ぶどう膜炎の発症機序: (馬の眼感染症などの研究により) レプトスピラ蛋白質が馬の眼組織抗原と類似していることから、臓器特異性自己免疫疾患 の可能性が示唆されています。
最近のコメント