頭部外傷(特に、顔面の眉毛外上方部の強打時)により視神経管 (視束管)骨折などが発生し、外傷性視神経症H47.0 を来たしたとき、減圧を目的として外科的治療「視神経管開放術」が行われることがあります。
下記コクラン・レビューでは、本疾患に対する無作為化比較臨床試験は確認できませんでした。ご一読下さい。
The Cochrane Database of Systematic Reviews 2005, Issue 4. Art. No.: CD005024.pub2. DOI: 10.1002/14651858.CD005024.pub2.
外傷性視神経症の手術治療 (コクラン レビュー)
Surgery for traumatic optic neuropathy (Cochrane Review)
Yu Wai Man P, Griffiths PG
[最終改訂 04 August 2005]
» http://www.update-software.com/Abstracts/AB005024.htm
[要約の邦訳]
背景: 外傷性視神経症 (Traumatic optic neuropathy TON) は鈍的または穿通性頭部外傷に続発し重篤な視力障害にいたる重要な原因の一つです。一次的な損傷に続いて、視神経管内の視神経浮腫や骨片による圧迫がニ次的な網膜神経節細胞の消失を来たすと考えられています。そのため、ステロイドまたは手術的介入または両治療法による視神経減圧治療は、TONの視力予後を改善させると提唱されています。
目的: 本レビューの目的はTON治療としての外科的介入の効果および安全性を審査することでした。
検索戦略: (訳者注: コクラン・レビューに際して通常使用される諸方法のため、邦訳は省略します。原文を参照して下さい.) 臨床試験に関する電子的検索において、期日や言語の上で制約はありませんでした。
選択基準: どのような種類の手術的介入であっても、手術単独治療またはステロイド併用治療をステロイド単独治療または未治療と比較したランダム化比較試験のみ調査対象とする方針としました。
データ収集と解析: 著者 2人が個別に検索戦略により確認された論文タイトルと抄録を評価しました。対象基準を満たす臨床試験はなく、よって解析対象はありませんでした。
主要な結果: 著者らの対象基準を満たす臨床試験は見出せなかった。
著者らの結論: 現在知られているエビデンスは、そのほとんどが一連の症例を対象とした小規模の後向き試験から得られています。TONに対する手術介入法が多様であるため、たとえ質的な比較であっても、これらの試験を比較することは極めて困難です。一方、自然に視力が回復することが比較的高率であり、視神経の減圧手術がさらに効果的であるとの証拠はありません。他方、手術は術後脳脊髄液漏や髄膜炎などの明らかな合併症のリスクがあります。そのため、TONにおいて手術を実施するように決断することは、依然として議論の余地があり、個々の症例でその利点についての評価が必要です。TONの手術介入について十分に強化されたランダム化比較試験を行うことが急務ではありますが、難しい試験となるでしょう。
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