海外では、加齢黄斑変性、病的近視のほか、眼ヒストプラスマ症候群 (ocular histoplasmosis syndrome OHS) 、血管線条、特発性 (原因不明のこと)による脈絡膜血管新生についても、ベルテポルフィン光線力学療法 PDT (ocular photodynamic therapy with verteporfin) の有用性が報告されています。
しかし、若年者に多い下記の「特発性中心窩下脈絡膜血管新生」 「特発性限局性網膜下新生血管」症例では、必ずしも自然経過が不良ということではありませんので、誤解が生じないよう論文要約をお伝えいたします。
(1) 特発性中心窩下脈絡膜血管新生の自然経過
Ophthalmology. 1995 May;102(5):782-9.
The natural history of idiopathic subfoveal choroidal neovascularization.
Ho AC, Yannuzzi LA, Pisicano K, DeRosa J.
Vitreoretinal Service, University of Pennsylvania, Scheie Eye Institute 19104, USA.
[要約の邦訳]
目的: 若年患者の特発性中心窩下脈絡膜血管新生 (idiopathic subfoveal choroidal neovascularization CNV) の長期自然経過を調査研究する。
方法: 診療所 1施設と都市部の眼科病院 1施設にて特発性中心窩下脈絡膜血管新生と診断された 19連続症例の後向き調査。
結果: 特発性脈絡膜血管新生が見られた 87連続症例のうち 23症例 (26%)は、中心窩下の脈絡膜血管新生 CNV を呈した。中心窩下病変を有する 19症例は 中央値 87か月 (範囲, 5-230か月)の追跡調査がなされていた。初回の検査時、最高矯正スネレン (Snellen)視力の中央値は 20/100 [注 0.2] (範囲, 20/40[0.5]-指数弁); 最終検査時, 視力の中央値は 20/70 [0.285 およそ 0.3] (範囲, 20/20[1.0]-指数弁)であった。95%の患者の視力は安定するか有意に改善したが、一方 5%の患者のみ視力は有意に低下した。CNV のサイズが長期的な最終視力に関連する唯一の変数であった。初回の蛍光眼底血管造影を行った時、1×視神経乳頭面積 disc area 以下の病変は、より大きい病変に比べて最終視力 20/60 [0.33, およそ 0.3]以上と関連しやすく、最終視力 20/200 [0.1]以下と関連する可能性は低かった (P = 0.038)。これらの結果はロジスティック回帰分析にて確認された (P = 0.027)。経過観察中、他眼には発症していなかった。
結論: 特発性中心窩下脈絡膜血管新生は必ずしも重度の視力低下を来たすわけではない。このタイプの中心窩下病変に対する治療は良好な自然経過の可能性を考慮すべきである。
注: [ ]内の視力は、分数視力(Snellen)を日本で一般的な国際標準小数視力表示に訳者が換算したものです。
(2) 特発性限局性網膜下新生血管
Am J Ophthalmol. 1976 May;81(5):590-9.
Idiopathic focal subretinal neovascularization.
Cleasby GW.
[要約の邦訳]
20症例において、「特発性限局性網膜下新生血管」は中心窩網膜または中心窩近傍に生ずる網膜下新生血管の孤立病巣 solitary focusで、病巣を覆っている感覚網膜(神経上皮)および病巣に接している神経上皮の漿液性剥離ないし出血性剥離、または両方を伴うことが特徴であった。その病変は、推定眼ヒストプラスマ症候群 presumed ocular histoplasmosis syndrome に見られる新生血管板(膜)に類似していたが、本症候群の診断に絶対必要であるといわれている他の特徴的な随伴眼所見はなかった。この症例グループでは、ヒストプラズミン皮膚試験 histoplasmin skin test の陽性頻度は一般住民と同じ程度であった。20症例の中で、2名は両眼性であった。全例で患眼や他眼にそれ以外の病変はなかった。本疾患は、その期間は一定ではないが、自己限定的 self-limited (注)である, しかし、中心視力低下を伴う広範な瘢痕を来たす可能性がある。
注:「self-limited」 » スペースアルク:英辞郎
"治療をしないでも長期的には症状が落ち着いたり収まる性質のある"
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