下記の論文は、9才から 69才 (平均 29才)までの幅広い年齢層の視覚機能発達後の患者を対象とした斜視手術成績を報告したものです。斜視の種類、程度、手術目的、手術方法などは、個々の症例で異なりますし、前向き調査や比較臨床試験によるエビデンスではありませんが、斜視手術後の全体的な傾向をお伝えするために引用しました。
視覚発達後の患者に対する斜視手術の適応と結果
Can J Ophthalmol. 1997 Dec;32(7):436-40.
Indications and outcomes of strabismus repair in visually mature patients.
Gill MK, Drummond GT.
Department of Ophthalmology, University of Alberta, Edmonton.
[要約の邦訳]
目的: 視覚発達後 visually mature の患者に対する斜視手術の適応、結果、起こり得るリスクを確認すること。
デザイン: 一連の症例の調査
セッティング: カナダ エドモントンの大学の紹介外来
症例: (最初の診断によってグループ分けした) 種々のタイプの斜視に対する手術を受けた 9才から 69才 (平均 29才), 222症例 (女性 115, 男性 107例)。全症例は、少なくとも術後 6週間の調査を行った。
結果判定法: 手術既往歴、術前、術後 6週、最終診察時に記録した、プリズム・ジオプトリー Δ (遠方・近方)単位の斜視角 、感覚の状態 (近距離の Titmus ステレオテストで測定)、諸症状 (複視、頭位異常、眼精疲労)の有無。
結果: 患者は術後、平均 14か月の追跡調査を受けた。最終診察時、187症例 (84%)の眼位は、正位±15 Δ以内であった。全体 (222例中)では、術前 78症例 (35%)に比べて、術後 116症例 (52%)に、ある程度の立体視機能が確認された。複視、頭位異常、眼精疲労などの諸症状は術前、116症例 (52%)にみられたが、このうち 88症例 (76%)でこれら症状は完全に解消した。術前に複視症状がなかった 6症例 (4%) は、術後に同症状を呈していた。
結論: 視覚発達後に斜視手術を受けた患者の大多数は眼位改善、融像感覚の維持・時折の回復、複視・頭位異常・眼精疲労の除去などの機能的な利益を期待できることが示唆される。
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