3論文の要約を紹介いたします。ぶどう膜炎を呈する(マスカレードする)眼内悪性腫瘍である。日本人にもみられる。全世界的にもまれであるため、眼科医の診察を受けていても、診断、治療が遅れることが多い。
Curr Opin Ophthalmol. 2002 Dec;13(6):411-8.
Intraocular lymphoma.
Chan CC, Buggage RR, Nussenblatt RB.
Laboratory of Immunology. National Eye Institute, National Institutes of Health, Building 10/Room 10N103, 10 Center Drive, Bethesda, MD 20892-1857, USA.
眼内リンパ腫の起源は
1)原発性中枢神経系悪性リンパ腫(primary CNS lymphoma)
2)中枢神経系以外からの眼内転移
のどちかかである。
原発性中枢神経系悪性リンパ腫が網膜に原発したとき、原発性眼内悪性リンパ腫(primary intraocular lymphoma, PIOL)と命名されている。
PIOLはまれな悪性腫瘍であるが、発症頻度は過去15年間で急増している。主症状は、かすみと飛蚊症である。眼科検査にて、硝子体炎と網膜下浸潤がみられる。PIOLの診断は困難であり、画像診断法、脳脊髄液や硝子体液の検査が必要である。免疫グロブリン遺伝子の変化、インターロイキン IL-10の上昇(眼内液検査でIL-10/IL-6が1.0を越える)が診断に有用である。治療は、全身的な化学療法と放射線療法である。
一方、転移性の全身リンパ腫では、通常、脈絡膜に転移する。PIOLに比べてさらに発症頻度は少なく、予後もよい。
Surv Ophthalmol. 2001 May-Jun;45(6):463-71.
Variations in the presentation of primary intraocular lymphoma: case reports and a review.
Gill MK, Jampol LM.
Department of Ophthalmology, Northwestern University Medical School, Chicago, IL, USA.
原発性眼内悪性リンパ腫の臨床所見
ステロイド薬に対して抵抗性の汎ぶどう膜炎
網膜下の腫瘍性病変(色素上皮層レベル)
網膜浸潤による多発性深在性白点病変
網膜浸潤による壊死性網膜炎
網膜血管への腫瘍細胞浸潤による血管閉塞(動脈ないし静脈)
視神経浸潤
大多数の症例で、中枢神経にもリンパ腫を併発する。
原発性眼内悪性リンパ腫はしばしば致死的な経過となるが、これら眼所見から早期診断ができれば、予後は改善するであろう。
Klin Monatsbl Augenheilkd. 2004 May;221(5):401-3.
[Primary intraocular lymphoma with unusual clinical presentation and poor outcome]
Pache M, Kain H, Buess M, Flammer J, Meyer P.
Universitats-Augenklinik Basel, Mittlere Str. 91, 4012 Basel, Schweiz.
PIOLの頻度は全眼内腫瘍の1%以下。
症例:70歳男性。突然の左眼視力低下のため入院。高度の硝子体出血が見られた。超音波検査にて、眼底後極部に網膜下固形腫瘍像が観察された。生検を含む診断的硝子体手術を施行。免疫化学的検査にてB細胞性リンパ腫と診断された。全身的には腫瘍は発見されなかった。患者は、出血性緑内障を合併し、失明し、しかも眼痛を伴うようになるまで、すべての治療を拒否し続けた。眼球を摘出し、高用量のメトトレキセート等による化学療法を施行した。眼球の病理検査にてPIOLと確定した。PIOLは診断困難であり、しばしば診断が遅れる。
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