頭部打撲や顔面外傷後、何年も経ってから、眼窩上 (下) 神経痛を来たすことがあります。月経時の頭痛、典型的/通常型片頭痛、群発頭痛と同じ症状を呈したり、副鼻腔炎と間違われたりするようです。眼窩上 (下) 神経痛では、局所に少量 (0.5cc 程度) の麻酔薬等を注射すると、頭痛などの症状は劇的に改善します。
「片 (偏) 頭痛 へんずつう migraine」は日本人においても (人口の8.4%) よくみられる病気の1つです。しかし、この頭痛の原因や症状などは特徴的で頭痛の中では特殊なタイプですが、素人の方は、米国のように「ずきずきする痛み throbbing headache」であれば、すべて "片頭痛" と呼んで (誤解して) いるようです。「片頭痛」の診断基準など:
日本神経学会治療ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guideline/headache/index.html
頭痛大学
http://homepage2.nifty.com/uoh/hosp/01taisaku_mig.htm
眼科情報ファイル
http://cgi12.plala.or.jp/yamamura/topics/index.cgi?page=5
ペインクリニックにおける頭痛の治療法
PDFファイル http://www.painphysicianjournal.com/2000/april/P197.pdf
Pain Physician, Volume 3, Number 2, pp 197-200, 2000.
Association of Pain Management Anesthesiologists
Headache Management in an Interventional Pain Practice
Andrea M. Trescot, MD
(以下は抄訳です。眼科に関係する眼窩上神経痛、眼窩下神経痛 のみお伝えします)
米国では2000万人以上が激しい頭痛を経験しており、年毎の有病率を見ると、1980年以来 60%近く増加しています。これらの患者の80%程の人が欠勤にいたるような頭痛による障害を報告しています。実際に、頭痛のある人の半数は片頭痛のため中等度から高度の障害を来たし、推定では毎年13日の労働日と8日の休暇日を失っています (1).
「片頭痛」は素人にとって、とても混乱しやすい用語です。医師、特に神経内科医は、片頭痛を特殊な頭蓋内の血管性頭痛に使用します。患者は通常「ずきずきする痛み」を片頭痛と呼んでいます。
頭蓋外の頭痛発生源である
supraorbital neuralgia 眼窩上神経痛
infraorbital neuralgia 眼窩下神経痛
auriculotemporal neuralgia
facial neuralgia
posterior auricular neuralgia
occipital neuralgia
cervical facet pathology
masseter spasm
sternocleidomastoid muscle spasm
trapezius spasm
interspinous ligament pathology
をペイン治療を専門とするドクターが知ることは、治療オプションの拡大につながるので、以下に解説します。
眼窩上神経痛
三叉神経第一枝が絞扼(こうやく entrapment)されると、片側ないし両側の「ずきずきする頭痛」を来たします。しばしば、月経直前や明るい光のため横目になったことが引き金となります。眼窩上神経痛は前頭洞炎と誤ることがあります。車のフロントガラスで頭部を打撲したり、顔面を殴打されたような顔面への外傷も原因となります。神経を絞扼するに十分な程度に組織瘢痕が硬くなるまで何年も頭痛は発生しない可能性があります。予兆や片側ないし両側の「ずきずきする頭痛」のほか、羞明 (まぶしい)、聴覚過敏、嘔気、嘔吐が起こります: これらの症状は、片頭痛についての International Headache Society (IHS) 基準に全て合致することがあります。月経前や (赤ワイン、グルタミン酸ナトリウム、チーズなどを含む) 塩分過剰摂取による体液貯留は、このような"片頭痛"様症状の引き金になります。滑車上神経もこの部位にありますので、フィット調整の悪い眼鏡を装用すると、この神経が障害されることがあります。頭痛は正中部の前頭部痛になります。典型的群発頭痛 (男性、突然の発症、鼻水、目の(強膜)充血、周期的) を呈した患者に対して少量 (0.5cc) の局所麻酔薬注射後、頭痛が瞬時に完全消失したケースも経験しています。
治療 (および, 診断) は、頭痛が発生しているときにステロイド薬を含む局所麻酔薬を局所注射します。神経の絞扼を増加させないため、少量を使用します。"注射針を抜く前に" 頭痛が消失し、嘔気、羞明、他の随伴症状も急速に改善するといった顕著な効果があります。眼窩上窩の部位で神経を冷凍する方法 Cryoneurablation は長期間の効果があります。ボツリヌストキシン注射薬 Botox を利用し額のしわをとる治療を行う形成外科医は、この治療を行った患者で"片頭痛" が劇的に改善したことを報告しています。眼窩上神経と滑車上神経が筋によって絞扼されることが一般的な病態である可能性を示唆しています。消炎外用薬もこの領域の皮膚を薄くするため、とても有用です。
眼窩下神経痛
三叉神経第2枝が頭痛に関係し、しばしば上顎洞炎と誤診されます。眼窩上神経と同様に、頭痛が始まる前に(何年も前)に外傷があり、月経に伴う頭痛や典型的/通常型片頭痛の症状を呈することがあります。診断法はできれば頭痛発生中に局所注射を行うことです; 口外ないし口外神経冷凍法 cryoneurablation があります。
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