オーストラリアでは、1970年代から2004年の30年間の調査により、小学校の子ども (4歳から12歳まで)の近視有病率は、アジアや北アメリカのような急激な増加はなく、しかもこれら地域に比べて有意に低いとの結果が得られました(下記論文発表 2005年 2月)。オーストラリアにおける教育システムやライフスタイルが30年間安定していることが要因であるのか、問題提起されています。
日本、アメリカの小学生の近視に関する数多くのレポートの中から「良質なエビデンス」だけを抽出して、このエントリーに(今後)追加します。
オーストラリアでは30年間、小学生の近視流行のエビデンスはほとんどない
BMC Ophthalmol. 2005 Feb 11;5(1):1.
Little evidence for an epidemic of myopia in Australian primary school children over the last 30 years.
Junghans BM, Crewther SG.
School of Optometry and Vision Science, University of New South Wales, Sydney, UNSW Sydney 2052, Australia.
背景: 最近報告されている小学生の近視の有病率は世界の地域によって大きく異なります。過去30年間における他のオーストラリアでの研究や同じプロトコルを利用した著者らの以前の論文データと比較し、1998年から2004年まで間にオーストラリア東シドニーにおける都市部小学校生徒の屈折異常の有病率を推計することが本研究の目的です。
方法: 調節麻痺点眼液を使用せずレチノスコピー retinoscopy 検査を行い、右眼の屈折値としました。ニューサウスウエールズ New South Wales 大学 Optometry and Vision Science 学校 Vision Education Centre Clinic にて視覚科学旅行の際に全眼科検査を行った、4歳から12歳の子ども 1,936 名の屈折値データを解析しました。近視の定義は、等価球面度数で -0.50 D から、遠視は等価球面度数で+0.50 D からとしました。
結果: 12歳の子どもの平均等価球面度数は 4歳に比べて有意に減少していました (p < 0.0001. 4歳 +0.73 +/- 0.1D (SE)、12歳 +0.21 +/- 0.11D (SE))。近視の子どもの比率は、全年齢 (4-12歳) 8.4%, 4歳 2.3%、12歳 14.7% でした。遠視は 38.4% でした。現調査データと以前の著者らの発表データにおけるコホート、年齢、ジェンダー(男、女)について3元配置分散分析 (3-way ANOVA)を行ったところ、年齢に有意な主効果があり (p < 0.0001)、コホート (p = 0.134) や ジェンダー (p = 0.61) は有意ではありませんでした。
結論: 新しいデータを著者らの1990年初めのデータや1970年代・1980年代の都市部、田園地帯の8,000名余りの子どもを対象とした研究と比較しましたが、世界の他地域で報告されているような近視の有病率急増のエビデンスはありませんでした。実にオーストラリアの子どもの近視有病率は、人口動態に変化があるにもかかわらず、アジアや北アメリカでの報告に比べて有意に低い状態が続いています。この結果がここ30年間のオーストラリアの安定した教育システムやライフスタイルを反映したものであるか問題提起します。
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