30年前 (1976年)、Bourne WM らは角膜内皮細胞を観察、撮影する診断装置 スペキュラーマイクロスコープ specular microscope を眼科臨床、研究に導入しました。その後、本研究の第一人者 Bourne 先生の「角膜 cornea 内皮 endothelium」に関する主著、共著発表論文は 105編余りヒットします (PubMed 検索)。
Int Ophthalmol Clin. 1976 Summer;16(2):199-209.
Photography of the corneal endothelium.
Bourne WM.
………Endothelial photographs are extremely useful in documenting the corneal effects of ocular trauma, aging, inflammation, and surgery.………This new photographic technique provides information that ……
数多くの論文の中で、正常ヒト角膜内皮細胞にみられる長期(加齢に伴う)変化に関する1論文をお伝えいたします。たとえば、成人のコンタクトレンズ装用者の角膜内皮細胞検査結果について、過去・現在のデータを比較するとき、年平均、0.6% 程度の内皮細胞密度の自然減少などを考慮しなければなりません。
10年間における中央部角膜内皮細胞変化
Invest Ophthalmol Vis Sci. 1997 Mar;38(3):779-82.
Central corneal endothelial cell changes over a ten-year period.
Bourne WM, Nelson LR, Hodge DO.
Department of Ophthalmology, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota 55905, USA.
[要約の邦訳]
目的: 正常ヒト角膜内皮細胞の長期形態学的変化を推計する時系列データを取得すること。
方法: 初回の研究から10年後、著者らは同一の接触型スペキュラーマイクロスコープを使用し、健常者52名の中央部角膜内皮を再撮影した。初回検査時、18才未満であった 10名の所見は分けて検討した。他 42名の成人被験者の検査間隔は、平均 10.6± 0.2年 (範囲,10.1年から 11年)であった。最近の検査時、彼らの年齢は平均 59.5± 16.8才 (範囲, 30才から 84才)であった。各被験者の角膜は 100個の細胞の輪郭をデジタル化(2値化)した。
結果: 42名の成人被験者では、平均内皮細胞密度は 10.6年間で、2715 ± 301 個/mm² (cells/mm2)から 2539 ± 284 個/mm² (P < 0.001)に減少した。この期間の指数関数算出の細胞消失率 cell loss rateは、年 0.6% ± 0.5%であった。細胞消失率と年齢との間に統計学的に有意な関連性はなかった。 10.6年間で、細胞面積の 変動係数 (coefficient of variation CV)は 0.26 ± 0.05 から 0.29 ± 0.06 (P < 0.001)に増加し、6角形細胞の占めるパーセントは 67% ± 8% から 64% ± 6% (P = 0.003)に減少した。初回検査時、年齢 5才から 15才であった 10名の被験者の指数関数的細胞消失率は、年 1.1% ± 0.8%であった。
結論: 正常なヒト角膜中央の内皮細胞密度は、大人になってから一年当たり平均、約 0.6% 減少し、細胞の大小不同 polymegethism と多形性 pleomorphism は徐々に増加します。
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