小児白内障手術と合併症に関する最近の論文です。
特に、形態覚遮断弱視 (視性刺激遮断弱視) の原因の1つである先天性白内障眼では、手術時期と合併症の関連性は以前からよく知られていました。
参照ページ: http://www.emedicine.com/oph/topic45.htm
Unfortunately, the improved surgical techniques of the 1990s have not lowered the incidence of glaucoma from the series published in the 1980s. The development of glaucoma (which occurs in later years) only occurs in cataract eyes that undergo surgery. This may be in part due to the immaturity of the angle at the time of surgery. A delay of a few weeks allows the angle of the immature eye to develop.
最近の手術技術の進歩にもかかわらず、晩期合併症「緑内障」の頻度は減少しませんでした。白内障術後にのみ発生するため、緑内障発症機序の1つとして手術時の「隅角」の未熟性が考えられています。数週間手術を遅らせると、未熟な眼組織の隅角部が発達します。
[1] 先天性(または発達異常による)白内障の手術後に起こる開放隅角緑内障の頻度は 3% から 41% といわれています。
[2] 小児白内障術後の無水晶体性緑内障は最も多い術後合併症でした (20.2%)。
[3] 生後 1か月以内に両眼白内障手術を受けると、少なくとも 1眼に 5年後緑内障が発生するリスクは 50% (95%信頼区間 27.8 ~ 77.1) であり, 1か月以降に手術を受けたときのリスク 14.9% (95%信頼区間 6.5 ~ 32.1)に比べて有意に高くなりました (ログランク検定 log rank test, p = 0.012)。リスク解析は、Kaplan-Meier 生存時間解析法 survival analysis を用いた推計値です。
この理由は不明ですが、両眼性白内障の症例では 4週児となるまで手術を遅らせることが賢明かもしれません。一方、
[1] 角膜直径 >10mmの症例を対象とした手術群2グループの術後の緑内障発生頻度を比較しました。調査結果は、一次眼内レンズ移植術眼 1/377眼(0.27% 平均年齢 5.1 +/- 4.7才; 平均観察期間 3.9 +/- 2.7年), 無水晶体眼 14/124眼(11.3% 平均年齢 2.7 +/- 2.6才; 平均観察期間 7.2 +/- 3.9年)でした。術後、無水晶体状態のままである手術眼に比べて、偽水晶体眼 (1次眼内レンズ移植術眼) では開放隅角緑内障の発生頻度が減少することを報告します。
参考文献:
[1] 1次眼内レンズ移植術は子どもの"無水晶体眼"緑内障を予防しますか?
J AAPOS. 2000 Feb;4(1):33-9.
Does primary intraocular lens implantation prevent "aphakic" glaucoma in children?
Asrani S, Freedman S, Hasselblad V, Buckley EG, Egbert J, Dahan E, Gimbel H, Johnson D, McClatchey S, Parks M, Plager D, Maselli E.
Duke University Eye Center and the Duke Clinical Research Center, Durham, North Carolina, USA.
[要約の邦訳は省略します]
[2] 水晶体摘出術 小児例193眼の合併症
Ophthalmic Surg Lasers Imaging. 2005 Jan-Feb;36(1):6-13.
Complications of pediatric lensectomy in 193 eyes.
Chen TC, Bhatia LS, Walton DS.
Department of Ophthalmology, Harvard Medical School, Massachusetts Eye and Ear Infirmary, Glaucoma Service, Boston, Massachusetts 02114, USA.
背景と目的: 小児白内障に対する水晶体摘出術 lensectomy に伴う晩期合併症と長期視力成績をより明確にすること。
対象患者と方法: 1970年から2002年までの間に小児眼科医1名が診察した全症例の後向きレビュー調査。大学附属の臨床施設で診察が行われた。水晶体摘出後の後期合併症の頻度を明確にする調査である。最終的な長期視力結果は特定の手術合併症、眼部先天奇形、全身奇形に関連していた。
結果: 小児白内障のため水晶体摘出術を施行した症例は138症例 193眼であった。平均観察期間は 10.8 +/- 6.7 年 (範囲 3か月から 31.3年)であった。
最も多い術後合併症は無水晶体性緑内障 aphakic glaucoma (20.2%) であり、術後平均 3.4 +/- 3.7 年にみられた。最終診察時における視力(中央値)は、無合併症眼で 0.5 (20/40), 有合併症眼で 0.25 (20/80)であった。
結論: 無水晶体性緑内障は最も多い術後合併症 (20.2%)であった。眼部および全身の奇形、術後合併症を伴った手術眼の多くは、視力結果がより不良であった。
[3] 先天性白内障に対する早期手術は緑内障のリスク因子か?
Br J Ophthalmol. 2004 Jul;88(7):854-5.
Is early surgery for congenital cataract a risk factor for glaucoma?
Vishwanath M, Cheong-Leen R, Taylor D, Russell-Eggitt I, Rahi J.
Visual Science Unit, Institute of Child Health, London, UK.
[要約の邦訳は省略します]
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